内容説明
言葉は人間存在の証し、言葉こそが人間である。そこに錘鉛を下ろして、このあたりでじっくりと、ワープロやパソコン、ひいては情報(諜報?)化社会の限界を見極める必要がある。人間の社会や生活を支えるために政治や経済活動はある。選挙や株価や円相場のために人間の生活がいつまでも蹂躙されつづけるわけにはいかない。五十年、百年先を見据え、日本語に不可欠の書くこと、言葉の復権、による時代への文化的抵抗が、今ほど必要なときはない。
目次
第1部 文学は書字の運動である(日本語を裏切る操作性;意識と無自覚の意識;ローマ字、仮名入力の怪 ほか)
第2部 ペンとナイフ、書くことと刺すこと(「行為障害」論;はびこる等価交換=ヤクザの論理;「絶対」と「無償」 ほか)
第3部 ギリシア・印刷・キリスト教(肉筆→印刷文字→電子文字へという神話;西欧的思考;ギリシア=ラテン語的歪み ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おらひらお
4
2002年初版。世の中は著者の思いと正反対の方向に進みつつあります。第3部の書くことと印刷に対する東と西の考え方の違いの指摘は面白かったですね。2013/05/07
たかボー
3
後半部分は殆ど読み飛ばしてしまったけれど、前半部分で「文章と意識の分裂」について書かれているあたりが興味深く面白かった。思考し想いを肉筆に綴る時、筆触の抵抗ですら思念の流れを妨げることになる。それにも増してワープロでは、文字を入力する為に指は大きく動き、入力された文字を変換する為には他の文字を見なくてはならない状況を作り出す。これにより、ワープロを使用すると肉筆で文章を作成するよりも思考との乖離が大きくなると述べられている。横書きの為の字なのか縦書きの為の字なのか、言われて形を見てみるとなるほど確かに。2016/11/11
あちゃくん
3
ペン先の一点から文字に命が吹き込まれ、 世界とのつながりを持つ。 そんなことを考えれば、「書く」と言う行為は十分神秘的だ。 2009/01/09
kinoko-no
2
ここで言う「書く」とは肉筆のこと。身体を使い、その瞬間の躊躇い、思考の迷い含めて「書く」とある。そこから、キリスト教文化と東アジアの文化について等、思わぬ内容に展開していき読みごたえがあった。再読要2010/12/31
hazama
1
終盤は面白いが、もう少し簡潔にお願いいたします。自分は手書きの方が楽だから一部共感するところは有るんだが、攻撃的なのと反復が多くて読みづらいっす。当時から存在する仮名入力、昨今のフリック入力についても聞いてみたい。(問答無用で斬られそうだけど。)2015/09/18