逆転の大中国史―ユーラシアの視点から

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  • サイズ B6判/ページ数 312p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784163905068
  • NDC分類 222.01
  • Cコード C0095

出版社内容情報

黄河文明より先に、草原地帯に青銅器文明は興っていた。唐、隋は漢民族の王朝ではない。そもそも漢民族という民族はいない。視点を北京からユーラシアに移す。歴史は違って見えてくる。





序 章 中国の歴史を逆転してみる



日本人は、中国の歴代王朝を暗記し、夷狄を討つため辺境の地に赴任する兵

士の漢詩をまなぶ。しかし、じつは、夏かから現在の中国まで一気通貫に現在

の中国に歴代王朝があったかのような史観は間違っている。北京から世界を

観るのではなくユーラシアから中国大陸をみると世界はちがってみえてくる。



第一章 「漢民族」とは何か



「漢民族」という「民族」が古代からいて、黄河を中心に文明を周辺部にひろげ

ていった、と現在の中国でも日本でも信じられている。しかし考古学的、言語

学的な証拠によれば、そもそも「漢民族」とよべるような人びとはいなかった。

ユーラシアに興った諸文明が黄河流域に移動してくる。



第二章 草原に文明は生まれた



紀元前十世紀の中原地区に、殷周王朝が栄えていたのと同じ時期、シベリア

やモンゴルなどのユーラシア東部には、青銅器を鋳造する冶金文明が生まれ

ていた。ユーラシアの青銅器文明は紀元前三千年前まで遡ることができる。

さらに時代を遡った草原の遺跡に、古代遊牧文明が残した謎の鹿石がある。



第三章 「西のスキタイ、東の匈奴」とシナ道教



万里の長城は、「漢人」の文明をよく現している。城壁で囲った土地に縛ら

れる文明だ。その外にあった遊牧文明は移動する文明だ。その先駆者ともい

えるのが、西のスキタイ、東の匈奴だった。シャーマニズム的な価値観の遊

牧文明と対照的な形で、「漢人」たちは「現世利益」の道教にのめりこむ。



第四章 唐は「漢民族」の国家ではなかった



現代中国の新疆ウイグル自治区やチベット自治区でなぜ、大規模な抗議運動

が二一世紀になってもしばしば発生するのか。ウイグル帝国とチベット帝国

と唐が鼎立していたユーラシアの歴史をいま一度振り返る必要がある。しか

し、唐ですら、そもそも「漢民族」の国家ではなかったのである。



第五章 三つの帝国が鼎立した時代



現在の中国の歴史教育では唐が九〇七年に滅亡したあと、混乱の五代十国時

代をへて「漢民族」による「宋」が再び中国を統一したことになる。しかし、

ユーラシア全体に視点を移すと、この時代は、モンゴル系の「遼」、チベッ

ト系の「西夏」、「宋」の三つの王朝が鼎立していた時代ということになる。



第六章 最後のユーラシア帝国、清



ハーンを頂いた大帝国「元」は一三六八年「漢人」朱元璋に滅ぼされ「明」

が建国。ユーラシアの人々は明のリーダーを皇帝と呼び「ハーン」と呼ばな

かった。17世紀、「明」にとってかわった満洲人の国「清」のリーダーは、遊

牧社会の伝統にそって玉璽をゆずりうける儀式をへて、ハーンを名のる。



終 章 現在の中国は歴史に復讐される

「逆転の中国史観」によって洗脳をとくと、現在の中国の問題が鮮明に浮かび

上がってくる。そもそも文明は鼎立していた。チベットやモンゴルを同じ中国

とすること自体に無理がある。分裂の導火線となるのは、漢族以外で育まれて

きたイスラム教、仏教などの宗教だ。

楊 海英[ヨウ カイエイ]

内容説明

日本人は、中国の歴代王朝を暗記し夷狄を討つため辺境の地に赴任する兵士の漢詩を学ぶ。しかし、実は、夏王朝から現在の中国まで一気通貫に歴代王朝が続いてきたかのような史観は間違っている。長城の外の草原には黄河文明とほぼ時を同じくして興った文明があった。青銅器を使い漢字文明にとりこまれるのを嫌いルーン文字を使った人々もいた。最新の考古学、文化人類学、言語学を駆使したまったく新しい歴史書の誕生!

目次

序章 中国の歴史を逆転してみる
第1章 「漢民族」とは何か
第2章 草原に文明は生まれた
第3章 「西のスキタイ、東の匈奴」とシナ道教
第4章 唐は「漢民族」の国家ではなかった
第5章 三つの帝国が鼎立した時代
第6章 最後のユーラシア帝国、清
終章 現在の中国は歴史に復讐される

著者等紹介

楊海英[ヨウカイエイ]
1964年、南モンゴルのオルドス高原生まれ。モンゴル名オーノス・チョクトの日本語訳は大野旭。国立静岡大学人文社会科学部教授。専攻、文化人類学。博士(文学)。1987年北京第二外国語学院大学日本語学科を卒業。1989年に日本に留学。別府大学、国立民族学博物館、総合研究大学院大学で文化人類学の研究を続けた。とりわけ国立民族学博物館では梅棹忠夫氏と松原正毅氏らに師事してユーラシア草原で現地調査。2000年に日本に帰化。著書に『墓標なき草原 内モンゴルにおける文化大革命・虐殺の記録』(岩波書店・司馬遼太郎賞受賞)、『チベットに舞う日本刀 モンゴル騎兵の現代史』(文藝春秋・樫山純三賞受賞&国基研・日本研究賞受賞)などがある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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R

25
ユーラシア大陸史における中国という見方をすることで、いわゆる中国史の歪みを指摘する本でした。中華思想のあり方と、それを育んだ歴史、漢民族という人たちの考え方がわかりやすく解説されていて、現代中国の外交思想も説明できそうな面白さがありました。やや遊牧民を贔屓にしすぎじゃないかとも思える内容ですが、それ以上に漢民族の唱える中国史を鵜呑みにしていた自分に気付けました。2017/04/03

Sakie

19
パラダイム転換が痛快だ。中国共産党に作為があるだけでなく、「中国」という国の枠組みにも違和感を感じていた。「中国」は「漢族、蒙古族(モンゴル)、満州族(マンジュ)、回族(ウィグル)、蔵族(チベット)」と多民族で成り立っている。「中国の歴史」は異民族による覇権の積み重ねで、各王朝は継承していない。万里の長城の北側にあるオルドス出身の著者が見る「中国」は、日本人が授業で習う中国より腑に落ちる。ユーラシア大陸の中心にあって、遊牧民が持つ英知と力。それでこそ、かの国の持つ底知れぬパワーが理解できようというものだ。2021/02/13

まると

18
著者はモンゴル系中国人学者。中国の歴史上、漢民族支配国家は稀で、大半がよそから征服してきた異民族王朝だったと、中国3000年の歴史を漢民族史観で語ろうとする現在の共産党政権を揶揄している。確かに元(蒙古)や清(女真)など、中世以降に強固な王朝を築いたのは漢民族ではなかった。とはいえ、征服してきた粗野な異民族でも「易姓革命」に従い、天命として天子を受け入れつつ、中華思想は堅持してきたことの方が中国の底知れぬ凄みと考えるべきだろう。万世一系の神の国などと優越性をうたう日本の右翼思想では到底理解できないものだ。2017/12/24

T坊主

18
1)著者はモンゴル出身の中国人、北京第二外語学院卒後来日留学、帰化した学者。モンゴル人の立場からも中国という国はないと。2)今の教科書がどう書かれているか知らないが、蒙古草原に偉大な文明、国家があったとは驚きでした。連綿とした中国4000年の歴史というのはなく、彼らの負け惜しみで、古来から日本人は中国だけに目を向けていて、中央アジアにはほとんど注目していなかった。3)漢人の中国とは数百年にすぎない。4)中華思想という専制主義、偏狭な考えでは、多様な民族、宗教を受け入れられず、そこから崩壊していく。2017/03/25

クサバナリスト

16
中華とその周辺の野蛮民族という先入観を払拭させるものだった。もっと周辺民族らの歴史も学ぶべきだと思う。元、清の他、随、唐も漢民族国家ではない。遣隋使、遣唐使が大陸文化を日本へ持ち帰ったという学校の歴史教育に引きずられ、それが本来は遊牧民族の国家の文化であることは知らなかった。2016/09/16

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