目次
1(仮想上の観覧車;一生分の虹を見ていた ほか)
2(カトラリーズ;雨過天晴 ほか)
3(わたしは街の細胞だった;くるぶしに桜 ほか)
4(犬の眼線)
5(はやぶさとひかり;夏の弧 ほか)
著者等紹介
toron[TORON]
大阪府豊中市出身。2018年4月からウェブサイト「うたの日」に投稿をはじめる。新聞歌壇、雑誌などへの投稿をしつつ、現在は塔短歌会、短歌ユニットたんたん拍子、Orion所属(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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アキ
106
Twitterで短歌に出会う。20代の瑞々しさが眩しい。僭越ながら選句した五首「この夏で最後だという先輩のスリーポイントの弧のうつくしさ」「おふたり様ですかとピースで告げられピースで返す世界が好きだ」「果てしない夜をきれいに閉じてゆく銀のファスナーとして終電」「改札という櫛の歯を通るときわたしは街の細胞だった」特選「ひび割れた液晶越しじゃない空を見ていた卒業証書まるめて」他にもいい短歌が多数。イマジナシオンは寺山修司の詩から。想像という意味だが、仮想という意味もあるフランス語。書肆侃侃房・新鋭短歌シリーズ2022/04/24
ポテチ
20
文学フリマでお会いできたのでサインをいただきました。『おふたり様ですかとピースで告げられてピースで返す、世界が好きだ』と『この夏で最後だという先輩のスリーポイントの弧のうつくしさ』が好きです。2022/06/10
まぁみ
19
新鋭短歌シリーズも本書で60巻に。10分の1程度の作品しか保有していないが、どの歌集も甲乙つけがたい。付箋の数でいくと、本書はトップクラス。分かり易く親しみやすい歌が多かった。いくつかは俵万智さんを想像するような感覚だった。優しくて鋭い感性がとても心地よかった。誰も見たことのない夏見せたくてワンピースにして着てみたんだよ/空、空、空、空の車はつかまらずつかのま月へ挙手をしている/おふたり様ですかとピースで告げられてピースで返す、世界が好きだ/この部屋の暗さに顔を上げるまで旅をしていた四百頁2023/08/30
おはぎ
15
新鋭短歌シリーズにままある刺激的さはなく、優しさ、瑞々しさといったイメージを喚起するような歌たちだった。宝石の輝きではなくて、たとえば太陽が降り注ぐ海辺の砂、水たまりの反射のようなキラキラがたくさん詰まっていて、読んでいると幸せな気持ちで心が満たされた。「ドで始まりドで終わるように観覧車降りてもきみがまだ好きだった」「キリンレモンひとくち飲めばひとくちの初夏の空気がボトルへ満ちる」2022/12/27
さとみん
9
たまに土曜日の朝刊でお見かけする名前に気付いて手にした歌集。20代かな?と思う以外に作者の実像が浮かばない記号的なペンネーム。新聞で読んでいた「かもめさえ手紙に見える埋立地もっときみから遠ざからねば」を含め、好きな歌があるたびにしおりを挟んでいたら、途中でしおりが足りなくなってしまった。切実ではあるけれど、生々しさはない。そんな世界の切り取り方がとても好きだ。2022/04/03