藤沢周平短篇傑作選 〈巻3〉 冬の潮

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藤沢周平短篇傑作選 〈巻3〉 冬の潮

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  • サイズ B6判/ページ数 297p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784163628301
  • NDC分類 913.6

出版社内容情報

第二巻に並び、この著者ならではの市井小説集。語りすぎず、かつ黙さず、いわゆる"藤沢調"として称賛される、独自の小説世界!

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

山内正

4
賭場を出て朝早く大川の向こうに朝日が指して朱に染まってる  まだ掛行灯を灯した自身番が  はじめ落し物を探してるのかと  娘は竹の棒を突きゆっくりと右足を踏み出した 又竹を前に  あっ危ねぇ、走り寄り怪我はと  駄目今稽古してるんだから  もうちょっとと歩いて笑った  あたい歩けなくてずーっと寝てたの家はあそこと指を指す  ほら昨日より上手く歩けたでしょ 馬鹿だねぇあんたもあんな小娘に なに言ってんだいとおつなが笑った  自分が堅気になろうとしている  おことは死んじまったよ二月前に 足も丈夫になったのに2022/08/17

山内正

4
ちょっと気になるんですよお爺さん半刻もああやって何時もと違うんです 蓋をしてた記憶が突然に取れて 二十一の由蔵が 外周りの途中誘われた博奕で負け 金を明日持ってこい店に行ってもと 知れたら終いだ 心の臟が高鳴り小さな金箱から 震える手で掴んだ時に 誰かに見つかったのだ 誰にも言いません早く忘れて下さいと その後店で揉め事があった筈だが 不意に顔を上げ口を開き笑った 思い出したのねお爺さん 見逃したのは女房だ女中や内儀では無く 夫婦になった後で 女房がいった言葉だったと さっ家に戻りましょと立ち上がる2022/01/05

山内正

4
いちいち相手になってたらこっちが持ちゃしない 二度目の中風で動けずにいる父 これからが母を悩ませるだろう 嫁に貰いたいって話あったんだが 五つ上の女遊びする人は嫌だよ きちんとした家から話が来ない人 幼馴染みの作次郎ならと気がする 店で茂ちゃん又しくじったんだ 作次郎に問い詰められている 八年もいるのに間違いをする 小さい頃と同じた茂が口を出した そんな事させねえと男に突っ込んだ 逃げるんだみさちゃ 縁談の男が言い寄ってきた 若旦那辞めてくれ 茂が血を流し倒れてる 気づかない振りなんか茂ちゃん 一度だけね2022/01/03

山内正

4
七十六の由蔵は土蔵の石に腰掛けて 半刻動かない 嫁のおよしは夫に様子が変と 朝目が覚め障子に当たる陽をいつまでも見てる様になった 髪を直して貰いふと若い頃の事を 思い出す あの女は一体誰だったのか、顔が浮かばない 私言いません 声は覚えてるのに、 店の金を借金の為に盗んだ時 女の姿を見た 顔はどうしても思い出せないとじっと俯向く 顔を上げ口を開き笑う 思い出したんですねお爺ちゃん あの女は女房のお若だったんだ! 十六年前に死んだ女房の時思い さあ家に入りましょと手をとられ お若の面影が薄れていた 2020/03/27

山内正

4
ゆっくり酒を呑みながら嫁のおぬい の横顔を見る 死んだ妻は水茶屋の女と嫌った 去年息子が酔って橋から落ちて死んだ 息子の一周忌を前に実家に帰す話をした 一月しておぬいは茶屋働きをしていた 働く事もないがと話だす女は 同じ家で話した女同じなのかと 十日して水茶屋を辞めていた 女郎屋の部屋に上がり あらと襖にもたれ横座りに あの男は喧嘩して死んだわよ 私を抱きたいんでしょ前からずっと あんた私を可愛がるからあの人酒を 飲むようになったのよ! あれはおぬいじゃあ無い! 2020/03/08

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