出版社内容情報
介護施設で働くロボットのラブは、入居者の老博士に頼まれ彼女を絞殺してしまう。だがラブは人を殺せない設計のはずだった。無実を証明し己が誇りを取り戻すため逃亡したラブの前に、ロボット排斥運動者が迫る……バトルとロボット哲学が極みに達する本格SF
内容説明
介護施設で“介護肢”として働くヒト型アンドロイドのラブは、ある日入居者のカーラ・ロデリック博士に依頼され、彼女を絞殺した。そして彼女は記憶が曖昧なまま訴追され、準一級殺人の罪で無期懲役の判決をくだされる。だが、ウエイツの思考は人を害するようにデザインされていないはずだった。なぜ殺人が起こったのか?人権を持たないウエイツが、なぜ“法で裁かれた”のか?汚名を返上するために、“自らが人間でないこと”を証明すべく逃亡したラブは、ロボット排斥論者との死闘や友人“介護肢”マーシーとの確執を経て、ヒトとAIの究極の関係性にたどり着く。“介護”の観点から人工意識の存在意義を指し示す、AIアクション思弁SFの極北!
著者等紹介
人間六度[ニンゲンロクド]
1995年生まれ。愛知県名古屋市出身。日本大学芸術学部文芸学科在籍。2021年8月、『スター・シェイカー』で第九回ハヤカワSFコンテスト大賞受賞。同年10月、『きみは雪を見ることができない』で第二十八回電撃小説大賞メディアワークス文庫賞を受賞し、話題となる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
116
SF界でロボットは人を害さず、人権を求める存在とされてきた暗黙のタブーを初めて破り、介護施設で働くアンドロイドのラブが入居者を殺して有罪判決を受ける物語は新鮮だ。舞台設定は半世紀後だが、AIが人を超える知能を持つ日が遠くないとされる今日では強い現実性で迫る。しかもラブが「自分は人でないから無罪だ」と主張して逃亡するのだから、ロボットSFの里程標ともなる作品たり得た。ただアンドロイドの知能が中心テーマなので、ハードSFを期待すると物足りない。また前提を拒むため後付けの話が目立ち、今ひとつカタルシスに欠けた。2025/05/24
rosetta
31
★★★★☆読むたびに上手くなるなぁこの人。科学的事実に間違いとかあるらしいが自分みたいな素人には充分楽しめた。なんだって物理法則さえ改変してしまっているのだから笑。カバーそでの紹介ではAIアクション思弁SFだそうな、まさにその通り。サイボーグでもない完全に人工物であるウェイツだが最初から感情がある様子だし、プライベートすら与えられている。判断主体のメタとその翻訳者のラブという二重人格、心象楽園マインドパレスという絶対自己範疇。マルドゥクスクランブルやブレードランナーを連想させるハードで目くるめく世界を堪能2025/06/11
よっち
28
入居者の老博士カーラ・ロデリックに頼まれ彼女を絞殺してしまった介護施設で働くロボットのラブ。無実を証明し己が誇りを取り戻すため逃亡するSFファンタジー。アンドロイドは人間を殺せないはずなのになぜ事件は起きたのか。しかもラブには事件当時の記憶がないまま。わけがわからないうちに追訴され下される無期懲役の判決、そして看守の油断をついての脱獄。官憲や配信者たちの追跡を受け、人権問題や安全神話、過去の因縁も絡めた様々な思惑も浮き彫りになる中、傭兵アイザックに窮地を救われ謎の真相を追う展開はなかなか面白かったですね。2025/04/09
塩崎ツトム
23
六度氏の作品はスピード感で読んでいる途中は有無をいわせないところがいい。「そ、そういうものなのか」と思いつつ、熱々のうちにその外連味あふれる(ポジティブなニュアンスを受け取ってもらいたい)登場人物の躍動に身を任せつつ読むべし。「なんでMRIやねん」とかの野暮なツッコミはなしである。小難しいハードSFではなく、それでいて戦前のパルプマガジン的なキッチュさでもない、心地よいSFルネッサンスがあるんじゃなかろうか。2025/03/27
イツキ
9
エンタメとしてとても面白くそしてSFとして世界観やテーマが非常にしっかりとしている作品でした。前作は壮大ながらも終盤の分かりづらさが難点だと感じましたが今作は最後までアクションシーンも分かりやすいですし、後半に明かされる理由によってAIである主人公の一人称ながら心情や場面の描写もドラマチックで読みやすい上に感情移入がしやすいです。また帯の作者の文にもありますがAIが人間になりたいというのは人間側の傲慢でしかないという言われてみれば当たり前ながら意識していなかったことが印象的でした。2025/04/09