内容説明
連続レイプ犯として起訴されたビリー・ミリガンは1978年、精神異常と判定され無罪となった。しかしその後、彼が送られたオハイオ州立ライマ病院は、体罰に電気ショック療法を用い、薬物で患者を廃人にする恐るべき場所だった。外部との手紙のやりとりも禁じられ、命を脅かされつつビリーはいかに生き延びたか…『24人のビリー・ミリガン』では書けなかった、精神病棟内でのビリーの孤独な闘いを明らかにする驚異の続篇。
目次
第1部 狂気(スポットを離れて;「メアリ、メアリ…」;混乱の時期;ミスタ・ブラクソの手;時間を失う;酒盛り;ペット療法;車輪つき電気椅子;死にゆく場所;彼らに混じったスパイ;壁の中のメッセージ;「ミリガン法」;ドアを盗む;戦争の武器;圧点;黒い月曜日;ライマの最後の日々)
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乱読太郎の積んでる本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のっち♬
121
『24人のビリー・ミリガン』の続編。1978年、性犯罪が無罪になったビリーは政治的圧力で電気ショックと薬物で患者を廃人にするライマ病院へ送られる。精神異常を免罪符とみなす世間は多重人格も判決も開放も認めたがらない。そんな中、虐待される周囲と自身のために立ち上がる彼は力強い。かつて苦痛を押し付け合った人格同士は結託を見せ、ハンデを対処力に変えている。もっとも、万能であり続けるには多重人格は余りに不安定な病だ。著者は他者・俯瞰的視点やメタ性を交えて、未統合の恐怖や出口のない未来への不安を丹念に汲み取っている。2023/01/21
ヴェルナーの日記
120
『24人のビリー・ミリガン』の続編。ビリーがライマ精神障害犯罪者病院に送られた後の話。そこは患者を犯罪者と見做し、治療と称した懲罰を与える劣悪環境の場だった。本作は解離性同一性障害を扱っているが、この病は現在に至っても発症のメカニズムが解明されていない。ただ患者に共通するのは、1.学校や兄弟間の虐め2.親等が精神的に子供を支配し自由な自己表現が出来ない等の人間関係3.ネグレクト4.家族や周囲からの虐待(心理的・身体的・性的)5.殺傷事件・交通事故等を間近に見たショック・家族の死等々とされる点である。2016/06/26
デビっちん
13
精神異常と判定され、無罪となったビリー・ミリガンは、ライマ精神病院に送られました。そこでは患者の自由や意思は尊重されず、電気ショック両方や薬物投与による廃人養成が行われている場所でした。本書は、『24人のビリー・ミリガン』の続編で、前書では記されなかったライマ精神病棟内でのビリーの生活と、教師とライターによる前書作成の舞台裏が語られていました。前書で記載されたエピソードも、違った角度から詳細に語られていました。2016/07/12
megaga
8
ダニエルキイス「24人のビリーミリガン」の続編。ビックリしたことが、この本は1994年に日本で出版されたけれど、今尚、アメリカでは未発表ということ…。自由の国アメリカで?って上巻読了…納得。。。州立ライマ病院での(精神病院)非人道的な扱いに只々茫然。良くホラーやミステリー映画に出てくる、むかーしの精神病院がたった32年前に現存してたってのだから驚き。あくまでも当事者達は(病院関係者)認めていないので、グレーゾーンだからこその未発表なのだろうけど…あまりにも恐ろしく下巻を読む前一息ついて、少し後回しにします2012/11/30
柏葉
8
「24 人のビリー・ミリガン」の続編。州立ライマ精神障害犯罪者病院への移送されたビリーが、過酷な場所でどのように生き抜いてきたかの記録。人格達がわりかし互いに協力的になってきているので、多重人格者としての苦しみよりも、ろくな治療も受けられない病院でどう切り抜けてきたかが主題となっている。薬漬けでゾンビのようにされ、介護人に殴られることが日常となっている患者達。ビリーと人格達の戦いが始まる。 2011/12/24