内容説明
従来の人類である感覚者と超次元能力を持つ感応者との破滅的な戦乱から17年、両者が確執を残しながらも共存している世界。世界政府準備委員会の要人である経済数学者が、300億個の微細な立方体へと超次元的に“混断”される事件が起こる。先の戦乱で妻子を失った世界連邦保安機構の捜査官パットは、敵対する立場にあるはずの感応者の少女ラファエルとともに捜査を開始するが…著者の原点たる傑作SFハードボイルド。
著者等紹介
冲方丁[ウブカタトウ]
1977年岐阜県生まれ。早稲田大学中退。在学中の1996年に『黒い季節』がスニーカー大賞金賞を受賞してデビュー。2003年の『マルドゥック・スクランブル』で第24回日本SF大賞を受賞、「ベストSF2003」国内篇第1位に輝く。以来、小説・コミック・アニメ・ゲームといったメディアを超えるエンターテインメントの創り手として注目を集めている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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- 評価
乱読太郎の積んでる本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いおむ
39
初期作品の改訂版。その後の作品群の片鱗が窺えます。ヒロインの印象が最初から最後まで全体を優しく包んでいるような綺麗な感じの作品。もちろん暴力アクションてんこ盛りですが。この続きが是非読みたくなる良作です。ところどころに入る犬のヘミングウェイの人間臭いしぐさが面白い(^^)2019/01/02
きゅーま
25
<クイーン>を中心とする超次元能力を持つ感応者と従来の人類との間に起こった破滅的な戦乱から17年後の、両者が確執を残しながらも共存している世界が舞台。世界連邦保安機関の捜査官パットはある事件の捜査に感応者の少女ラファエルとその相棒のヘミングウェイとともに乗り出すことになる。短いのにすごくきれいにまとまっていました。そしてきれいにまとまっているだけじゃないのが冲方氏のすごいところ。揺るぎない信念を持って行動するラファエルがちょっと大人び過ぎているきらいもありますがかっこよくて好きです。2012/08/22
歩月るな
24
エンタメの全て、静謐だけど苛烈。面白かった。立場年齢性別色々違うけど共同捜査。二人と一頭、それが活きる残留芳香の設定が好き。犬がいる安心感。面白かった、とはいえ自分は「SF小説の面白さが解らない」人間なのかと序盤を読んでてショックを受けた。読み慣れていないせいかもしれないが、序盤は特にちと読むのに厳しいと感じた。途方も無い距離感を予期させると言うかそういう文章。初期作であるため、加筆訂正で著者自身もイラッと来る箇所もあるようで「冲方くんのアイディア・スケッチ」の様相を呈する。自作見直しに忌憚無い所は流石。2015/01/21
アイゼナハ@灯れ松明の火
24
短いお話なんですが、いっぱいアイデアが詰まってて、しかもちょっと照れ臭くなるくらい初々しい感じ。祈りにも似た未来への希望を感じさせるラストと合わせ、何か貴重なものを読ませてもらった気がしました。2010/03/10
雪守
21
冲方さんがあとがきで触れている通り、マルドゥックシリーズを中心に他作品のモチーフがあらゆる場面に見えるこの本。嫌いになる要素がまるで見えません。短くとも綺麗にまとまっており、混沌とした世界での希望を描き出した物語でした。2012/12/31