内容説明
ある日、貧しく孤独な少女ローレンは、地震で崩れかけた施設で、少女とロボットの恋を描いた一冊の本を見つけた。そのときからこの本はローレンの宝物となり、シルヴァーはまだ見ぬ恋人となったのだ。やがて17歳になったとき、驚くべきニュースが伝えられた。META社が人間そっくりのロボットを発売するというのだ。すべてを投げだして、ローレンは発表会場のあるシティへと向かう…名作『銀色の恋人』待望の続篇。
著者等紹介
リー,タニス[リー,タニス][Lee,Tanith]
1947年、ロンドンの生まれ。事務員、図書館助手、店員、ウェイトレスといった職業を転々としたのち、1968年、短篇「ユーステス」で、プロ・デビュー。1979年発表の“平たい地球”シリーズ『死の王』で英国幻想文学大賞を受賞。ファンタジイにとどまらず、SF、ホラーのジャンルにまたがって、精力的に作品を発表し、現在長篇は70冊以上、短篇も250篇以上てがけている
井辻朱美[イツジアケミ]
東京大学人文系大学院比較文学科卒、白百合女子大学文学部教授、作家、英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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みつき
30
タニス・リーが銀色の恋人を発表してから24年後の時を経て生まれた続編。前作の、少女が一度は夢見る恋愛の理想というものを見事なまでにぶっ壊し、盲目的で世間知らずだったジェーンとは違った、自分の中に渦巻く嫉妬や羨望と向き合う冷静な主人公ローレンの生々しく激しい恋愛。愛する男がかつて愛した女性の影に怯え、駆け引きを繰り返す。その様が上手く描かれていて、前作とはまた違った角度から恋愛の本質を見る事ができた事がこの作品の魅力かと。またラストが魂の在処をそこに認めさせてくれているようでふんわり素敵な余韻でした。2013/06/20
作楽
11
ロボットの三原則を知らなかったのね、という世界。シルバーのが、素敵だったなぁ。 ローレンも可愛くない…(笑)でも、読んでて面白い箇所もあったな。2017/11/30
ndj.
7
これを24年間待ち続けた人は辛いだろうな…作品において当然のことながら神の場所にいるのは作者であって、どのように「世界」を造ることも造り替える事もできる。タニス・リーは無慈悲な神だ。前作の感傷をすべて吹っ飛ばし、甘ったるいところを切り捨てて、ブレイク風の幻視的黙示録のようなものまで挟み込んでロボットを神の領域まで引き上げてしまう! 乙女チックなワタクシはジェーンは世界のどこかかたすみでいつまでも「シルヴァー」の夢を見ていると信じさせてもらうことにしますよ。2015/08/01
鐵太郎
7
このお話が日本で受けるとしたら、どこでしょうかね。いわゆる「安全なセックス」になるのでしょうか。解説にありましたように、今女性の間で、BLと呼ばれる、ロマンチックなホモセクシャル恋愛ストーリーが受けているそうですが、突き詰めればこれも「安全なセックス」にほかならないという。このお話の場合、何しろ相手は高性能ロボットですから、すべてに渡って理想的な訳です。力は強い、知性は高い、技巧も巧み、しかも妊娠の危険はない。なるほどね。でも、この方向に対しては共感できる要素が少なく、波長は合いませんでした。残念、かな?2008/07/20
ankowakoshian11
5
積み本消化。10代の頃に読んだ『銀色の恋人』に続編が出ていたことを知り驚き……続編としては24年振りだそう。ひかわ玲子さんの後書きにもあるように、自分も仏教徒で八百万の神やら付喪神がつく話を身近にしてきたのでロボットの魂の在処は、あってもおかしくないよなー派、寧ろ、好物なほう。今作は前作の『シルヴァー』の記憶を持つが故に『死(スイッチオフ)』を恐れたロボット達が自分たちを支配しているMETA社の軛から逃れる話と、ローレンという少女とロボット・ヴァーリスとの恋愛……というか、愛の所在を巡る話というか。2021/09/09
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- 和書
- 道連れ彦輔 文春文庫