内容説明
夢と狂気と倦怠に支配された砂漠のリゾート、ウァーミリオン・サンズには、詩人や芸術家、映画スターや富豪が群れつどう。彼らは、住人の心を反映して自在に姿を変える向心理性の家で暮らし、音響彫刻や歌う草花を愛好していた。晴れた日には、砂上ヨットで砂鰾狩りや雲の彫刻を見物にラグーン・ウエストへと出かける。そこではコーラルDの雲の彫刻師たちが、色とりどりのグライダーで飛びまわり、白い積雲に一角獣や美しい映画女優の肖像を刻んでいるのだ…。イギリスSF界の鬼才バラードが、エキゾティックなリゾートを舞台に奔放な想像力と華麗な筆致で描く連作短篇集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
sakadonohito
12
アリゾナの砂漠っぽい?架空のリゾート地を舞台にした短編集。言葉選びや設定が自分には合わなくとっつきにくく感じた。各話思い返してみると悪くなかったかもと感じるのでこの手のSFは合う合わないが激しく損しがちだと思う。2022/10/09
ニミッツクラス
9
86年の400円の文庫初版を読んだ。80年に同社の海外SFノヴェルズで出ている。本国では「残虐行為展覧会」の方が早いが、日本では数ヶ月の差で本書が先に出た。いわゆるヴァーミリオン・サンズ物を9編収録で、いわく言い難い彼の地での、住人や群れ集うちょっと突き抜けた人々の成り行き譚。屈託があるのか無いのか、行動には何の衒いも迷いも無い処が却って非日常的で末世的だ。5編は既に既刊の短編集に収録済みで、その内の「ヴィーナスはほほえむ」が旧作「モビル」の改作編となる。コーラルDには物語としての圧力がある。★★★★★☆2017/09/06
rinakko
8
好きなのよね、このシリーズ。てなわけで、やっと纏めて読めた。くうう、やっぱりいい…。例えば今回初めて読んだ「風にさよならをいおう」は、極端に感じやすい(!)活性織物によるドレスやらスーツ、ガウン…たちが狂乱に追い込まれて末枯れてしまう辺りの描写が、すこぶる面白くて印象深かった作品。そこからの話の内容もよかった。既読作の再読も楽しめたし、久しぶしのバラードを隅々まで堪能した。満足。2014/03/05
スターライト
7
バラードの創造した架空のリゾート地〈ヴァーミリオン・サンズ〉ものを集めた短篇集。他の短篇集に収められたものもあるので、いくつかは既読。シリーズ中屈指の好篇「コーラルDの雲の彫刻師」を巻頭に配して、つかみはOK。音楽や映画、詩に絵画など様々な芸術を素材に盛り込みながらも、人間の心理を深くえぐる作品群は印象的。ベストはやはり「コーラルD」かなあ。復刊を求める声がやまないのも納得の一冊。2011/07/14
スターライト
6
バラードによる架空のリゾート、ヴァーミリオン・サンズを舞台にした連作短篇集。読みながらこの作品をカラーの漫画で味わうことができれば、さぞ美しいものになるだろうと再三思った。巻頭の「コーラルDの雲の彫刻師」をはじめ、各作品は彫刻・絵画などの美術をモチーフにちりばめられている。ヴァーミリオン・サンズに住む人々は、いわゆる富裕層なのだが、表4に「夢と狂気と倦怠に支配された砂漠のリゾート」とあるように、愛憎渦巻く人々の感情がむきだしになっている。さらにそれが向心理性の建築物や彫刻などで視覚的にも増幅され→2025/08/18