NHKブックス
山県有朋と明治国家

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  • サイズ B6判/ページ数 252p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784140911709
  • NDC分類 312.1
  • Cコード C1321

内容説明

高杉晋作のもと奇兵隊の軍監として幕府軍と、そして英米仏蘭の四国連合艦隊と戦い、明治新政府で首相として二度組閣した男、山県有朋。閥族・官僚の総本山、軍国主義の権化、侵略主義の張本人と批判されてきたその実像を、俊英が描き直す。一九世紀型の欧州秩序が崩壊する中、形成期の大衆社会の危うさを憂慮し、あえて「強兵」路線を担った山県から、近代日本とは何か、権力とは何かを考える。

目次

はじめに 忘れられた論争を手がかりとして
1章 山県有朋と明治国家の形成
2章 山県有朋の外交戦略
3章 山県有朋と明治国家の確立
4章 変革の予兆
5章 ポスト明治国家像の模索
おわりに 近代日本における山県有朋

著者等紹介

井上寿一[イノウエトシカズ]
1956年生まれ。一橋大学社会学部卒業。同大学大学院法学研究科博士課程、同大学法学部助手等をへて、現在、学習院大学法学部教授。専門は、日本政治外交史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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bapaksejahtera

7
既存の悪役視を脱し冷静な現実把握を持って国政に当たった権力者を描く。「統帥権」の確立は山県の手になる。それは巷間安易に誤解されるように軍部の覇権奪取にかかるレトリックではなく、軍政と軍令互いの独立のための措置であった。対外戦略としては脱亜を目指しつつ透徹した情勢把握により軍事よりも外交を以てこれに当たる政略。原敬との連携もそれらとの重要な一環であった。良書。2020/09/12

バルジ

7
現実主義者としての山県有朋を強く描き出した一冊。基本的に先行研究に依拠しながら論を進めてゆくスタイルだが、権力政治家としての山県を描いた岡義武の著作や「愚直」な権力者としての側面を強調した伊藤之雄の著作とはやや毛色が異なる。本書での山県は外交安全保障政策で現実主義的な路線を打ち出し、近代国家に必要な軍隊・警察・地方自治制度を作り上げた優れた指導者として描かれる。また、民族独立を主眼としていたという視点は岡義武『明治政治史」とも通底するものだと感じた。他の山県有朋評伝と共に読むと更に面白いだろう。2019/07/27

feodor

7
山県有朋の伝記でありつつ、維新期から大正期くらいまでの政治的な動きをみていく作品。後半世は政党嫌いといえども、原敬というカウンターパートナーとともにやっていたイメージができた。基本的には、奇兵隊総監として最初に遭遇した小国家長州の危機である長州征伐と四国艦隊砲撃事件から芽生えた対外的な敏感な感覚、尊王派からそのまま天皇制と国体維持への感覚というのが、ずっと続いていく意識であったのかな……とも感じた。なかなかおもしろい史論だったと思う。そして、よくも悪くも山県有朋の持つ明治・大正期の日本での存在感のすごさ。2011/04/02

ぽん教授(非実在系)

4
山縣有朋の現実主義的な国家運営者としての側面に光を当てている。大衆社会の浸透に警戒し、いかに大衆社会から天皇家と明治国家体制を守るか考え常に行動する山縣は従来のイメージとは違いかなり柔軟であり、大隈重信と加藤高明が国際秩序を無視した稚拙な外交をやらかしたときに不倶戴天の宿敵であるはずの立憲政友会総裁原敬に接近しついにはほぼ同盟関係を結ぶに至るところなどは明治をつくった元老としての有能ぶりを晩年になっても見せつける。無論様々な失敗もあったが、山縣の意義をしっかり取り上げている内容である。2015/08/03

ゆーみん

1
日本を先の大戦に至らしめた原因は何だったのか。それを探る中で「山県有朋」に辿り着いた。本書は肯定的に山県像を捉えている。彼が強硬なまでに戦前の軍の構築に至ったのは政党政治(ポピュリズム)を恐れていたからだと言う。確かに欧州の帝国主義から日本を守るためには、挙国一致体制は必要であったろうが、第一次世界大戦後には、日本は欧米と肩を並べるほどの大国になっていたのではないだろうか。すなわち、国家も民衆も幕末期に比べ成熟していたはずであり、一次大戦後は過度に警戒する必要はなかったのではないかと思う。2017/04/09

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