出版社内容情報
武士の本義が薄れた幕末維新期、変革の波に翻弄される侍たちの悲哀を描いた時代短篇の傑作六篇。中央公論文芸賞・司馬遼太郎賞受賞。〈解説〉竹中平蔵
内容説明
お家を守るため、妻にも娘にも「お腹召しませ」とせっつかれる高津又兵衛が、最後に下した決断は…。武士の本義が薄れた幕末維新期、惑いながらもおのれを貫いた男たちの物語。表題作ほか全六篇。中央公論文芸賞・司馬遼太郎賞受賞。
著者等紹介
浅田次郎[アサダジロウ]
1951年東京生まれ。95年『地下鉄に乗って』で第一六回吉川英治文学新人賞、97年『鉄道員』で第一一七回直木賞、2000年『壬生義士伝』で第一三回柴田錬三郎賞、06年『お腹召しませ』で第一回中央公論文芸賞、07年同書で第一〇回司馬遼太郎賞、08年『中原の虹』で第四二回吉川英治文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ehirano1
119
又兵衛、それでいいんだよぉ、それでぇ!思わず拍手したくなりました。後日談もよかった。2023/04/04
ふう
73
日常の経験から想像の世界へと飛んで生み出された、幕末に生きた武士たちの物語6篇。その飛び方がおもしろくて、同窓会名簿から名前に使われる漢字について考えるところなど、なるほどという感じでした。そこから繋がる「女敵討」は、生きるために大切なのは何かを描いてホロッとさせられる話で、一番好きです。全体に流れるユーモアともの哀しさ。あまり融通の利かない武士と、柔軟でしたたかな周りの人たちとの違いは、何だか現代にも通じているように思えました。わたしの父の祖父が生きたあたりの時代。それほど昔ではないのかもしれませんね。2015/09/08
エドワード
61
♪お腹召しませ~召しませ腹を~なんだその歌は?「面倒だ。腹でも切るか。」-時は幕末、儀式やしきたりでがんじがらめに煮詰まった武士社会。真面目に生きるほど滑稽になってしまう哀しさ、今も似たようなものだ、と語る浅田さんの筆が上手い。「神隠しもいいものだぞ。」-不在の自由を携帯電話に奪われた現代人に通じる。鼠の糞も黙って飲み込む「殿様は大変だ。」-社長の仕事は誰も教えてくれない。戦を知らぬ武士たちの戊辰戦争は名誉の出陣だ。本音を言えば「人の命より家の命の方が重かろうはずがない。」解っているのだ、サムライたちも。2020/07/02
tengen
61
入婿の不始末でお家存続のため切腹の覚悟はするのだが、嫁や娘からもお腹召しませと迫られ合点が行かない。☆大の大人が神隠しにあい数日後に生還したそのからくりは?☆とんとん拍子で藝州広島藩主となられた殿様は謎の斜籠訓練に悩む。☆国に残した妻が不貞?女敵討ちに向かう貞次郎であったのだが。☆不甲斐ない徳川幕府に慶喜公、我が浅田家は残念無念。☆幕臣の家に生まれ不遇をかこつ若者三人は、「御鷹狩」と称して夜鷹を襲撃するのだが。☆彡お腹召しませ/大手三ノ御門御与力様失踪事件之顛末/安藝守様御難儀/女敵討/江戸残念考/御鷹狩2016/11/30
ふじさん
59
独特の入りで綴る六つの短編集。自らの切腹で、御家を存続の危機を乗り越えようとする又兵衛の生き様を描いた表題作「お腹召しませ」、神隠しを装い昔の許嫁の最後看取る四郎次郎を描いた「大手三之御門与力様失踪事件之顛末」等、どの短編も閉塞感いっぱいの武家社会の悲哀を浅田の筆力で、描いていて面白く読めた。武士とて所詮は人間、それほど潔いとばかりは言えない。2020/07/21