内容説明
最後まで冷徹な自己分析、自己認識の中で、限りなく客観的、論理的世界へ飛翔して、自らの死と対決する三島ミスチシズムの精髄を明かす「太陽と鉄」、詩を書く少年が作家として自立するまでを語る「私の遍歴時代」、ともに自伝的作品2篇を収め、三島文学の本質を解明する。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
312
文体は小説でもなく、エッセイというわけでもない。三島自身の言い方を借りれば「秘められた批評」ということになる。『仮面の告白』の仮面を脱いだ語りとも言うべきか。言葉による虚構の対極に、確固たる形たる肉体があるのだとすれば、それらは本質的に相容れない存在である。また一方で、肉体が鍛錬において理想的な在り様を追究するとしても、究極の完成形たることはできない。すなわち、この矛盾を超克するものは死しかない。本書には随所に死への親和性が見られるが、その後の三島を知る我々には「あらかじめ書かれた遺書」に見えるのである。2016/01/05
安南
51
よく、体育会系を揶揄する言葉に《脳みそが筋肉》なんてのがあるが《筋肉が脳みそ》だったら三島由紀夫になるのでは?なんてこと考えてしまう。恍惚へと、カタルシスへと息荒く昇りつめるような語りで、三島好きはさらに惚れ込み、三島嫌いはなんだコリャ意味不明?と嫌悪しそうな三島自身による三島作品のについての詩的解説のような『太陽と鉄』。ときめいた!2015/01/14
馨
24
『太陽と鉄』は三島流の哲学書だったので言葉が難しかったりでなかなか理解出来なかったが何とか読みきりました。三島由紀夫は戦闘機に乗ったことがあったのか!すごい!後半『私の遍歴時代』は面白いです。太宰治に作品が嫌いですって言いに行くやりとりが笑えました。2014/05/11
赤い熊熊
18
申し訳ないのですが、表題作はよくわかりませんでした。なので、ナナメに読んでしまいました。後半の「私の遍歴時代」は読みやすく、特に太宰治のくだりを本人の文章で読むのは面白かったです。意外と成り行きで嫌いが定着したんですね。敬語もまともに使えない太宰の文章のマズさの指摘、とても分かりやすくて良かったです。太宰を教科書で扱っている日本の国語教育はやっぱりババ。2017/12/03
双海(ふたみ)
16
最後まで冷徹な自己分析・自己認識の中で、限りなく客観的・論理的世界へ飛翔し、自らの死と対決する三島ミスチシズムの精髄を明かす「太陽と鉄」。「男はなぜ、壮烈な死によってだけ美と関わるのであろうか」(61頁)2014/04/14