内容説明
若だんなは、前世でどんな人だった?若に会いたい、とつぶやく玉の付喪神。見覚えがあるという貧乏神の金次は、合戦の時代に出会った“若長”のことを語り始める。鈴彦姫は、縁のある神社の宮司が、一太郎に生まれ変わったのでは、と推理する。さらに、三百年前に前世の若だんなに惚れていたという麗しい鬼女まで現れ―。輪廻転生をめぐる全5話を収録、人と妖との絆が胸に沁みる第17弾。
著者等紹介
畠中恵[ハタケナカメグミ]
高知県生れ、名古屋育ち。名古屋造形芸術短期大学卒。漫画家アシスタント、書店員を経て漫画家デビュー。その後、都筑道夫の小説講座に通って作家を目指し、『しゃばけ』で日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞。また2016(平成28)年、「しゃばけ」シリーズで第1回吉川英治文庫賞を受賞する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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乱読太郎の積んでる本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
86
Audibleで1冊ずつ大事に聴いている。主に若手の歌舞伎役者さんらが一作ずつ担当されていて、皆さんそれぞれに味があるのだが、この巻の板東玉朗は、1番好きかも。若旦那はやっぱり江戸っ子なんだねってところがよい。この作品全体を通して1番好きなセリフは「長崎屋の若だんなが笑っている」だ。若だんなが笑ってさえいれば太平なのだ、という雰囲気に嬉しくて泣きそうになるのだ。若長の話、切なかったなあ、ねえ、金次。2024/08/24
sin
85
人は皆、死に至る今を生きている。今回のテーマは転生輪廻…人である若旦那の定命の果てを転生と云う縁で語り直した物語『えどさがし』で感じた寂寥を慰めるように、あやかしたちとの『むすびつき』と云う形で過去に遡って輪廻を紐解くが最後には転生のままならぬ一編を添えて、結びでは「大丈夫。今、私はここにいるよ。そうだろう?」と未だ見ぬ明日を憂うことを否定している。永遠は物語の中にあり、そして現実には、生きて在る今こそが永遠なのかもしれない。2020/12/29
ぶち
84
前の巻『すえずえ』『なりたい』あたりから、何百年と生きられる妖たちとせいぜい数十年しか生きられない人間である若だんなとの間に大きな差があることを意識させれてきました。そこに輪廻転生が加わって、若だんなが先に死んでしまっても生まれ変ってまた一緒に暮らしていけるという将来が見えてきて、少しホッとしていました。今作は、そんな将来のことではなく、前世の若だんなのお話です。どのお話に出てくる前世の若だんなの人柄が変らずに優しかったことに嬉しくなってきます。どのお話も妖と人の絆が胸に沁みるものばかりです。2024/11/09
bura
73
しゃばけシリーズ第17巻。たしか13巻までは読んだはず。久々に手にしたなぁ。江戸通町にある長崎屋の病弱でいつも律儀に寝付いている若だんなと、付喪神や鳴家など妖たちの相も変わらずにぎやかな物語。推理小説の要素もあるのでそちら側からも楽しめる。今回は「前世」がテーマ。輪廻転生を巡る5話の短編が連なる。これだけ長いシリーズなのに飽きさせないのは、作者のユニークな感性と創造力の成すところだろう。挿絵の柴田ゆうのキャラ絵もこの世界をイメージするのになくてはならない。うん、面白かった。2022/12/22
アルピニア
70
しゃばけシリーズ17弾。年末恒例の文庫新刊を読むと今年も終わりだなと思う。特にコロナ騒動で異例ずくめだった本年は、変わらぬ長崎屋の面々に会えてホっとした。今回は、生まれ変わりに纏わる5篇。マイベストは「昔会った人」。貧乏神の金次が長崎屋でのんびり居着いている訳は・・。昔の出会いを話す場面にじんわり瞳が潤んできた。金次さん嬉しかっただろうなぁ。若旦那って何回生まれ変わっても心の広さ、深さは変わらないんだな( *´艸`)「こわいものなし」は、しゃばけ版「輪廻転生の説法」という趣。少し背筋を伸ばして読んだ。2020/12/30