内容説明
女房より猫を可愛がる松五郎。哀れな女房が間男して(「お千代」)。娘の仕度金も用意できぬ貧乏御家人が五十両の都々逸勝負(「浮かれ節」)。暴力三昧の駄目亭主の元から女房が逃げた(「小田原鰹」)。絵師の夢を絶った市兵衛の元に転がり込んだ美貌の娘は、労咳を病んでいた(「証」)。親が残した大借金を五つの職を掛け持ちして返す和助だったが(「骨折り和助」)。感動必至、名作人情時代小説五編を精選。
著者等紹介
池波正太郎[イケナミショウタロウ]
1923‐1990。東京・浅草生れ。「錯乱」で直木賞受賞
宇江佐真理[ウエザマリ]
函館市生れ。『深川恋物語』で吉川英治文学新人賞、『余寒の雪』で中山義秀文学賞受賞
乙川優三郎[オトカワユウザブロウ]
東京生れ。『霧の橋』で時代小説大賞、『五年の梅』で山本周五郎賞、『生きる』で直木賞受賞
北原亞以子[キタハラアイコ]
東京生れ。『恋忘れ草』で直木賞、『江戸風狂伝』で女流文学賞を受賞
村上元三[ムラカミゲンゾウ]
1910‐2006。朝鮮元山生れ。『上総風土記』で直木賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ミカママ
200
私にとって時代小説の元祖である池波正太郎さんをはじめとする、そうそうたる作家さんたちによる江戸市井モノの短編集。意外だったのが(失礼)乙川さんの作品がよかったこと。直木賞を受賞した彼の作品が、イマイチ私には合わなかった過去があって。しっかし、本当にダメでやくざな亭主、こんなオトコは徹底的に懲らしめてやれって思うのが普通のオンナだけど、ラストはちゃんとこんな亭主にも手を差し伸べられたところが、納得いかないような、いやいやこれでよかったんだ、と思わせられたような。全編ほんわりあったかい気分で読了。2016/04/05
KAZOO
141
この時代小説アンソロジーも5冊目ですが、それぞれに楽しめる話を提供してくれます。これは題名通りの長屋の話ですが、ほんのりさせる話が5名の手練れによって語られます。池波、宇江佐、乙川、北原、村上さんそれぞれいいのですが、私は池波さんと村上さんの話がいいと思いました。2016/01/17
じいじ
94
笑いあり、涙あり…名手5人による人情時代小説は、めっちゃいいですよ。大御所・池波正太郎から幕が上がります。シャイで女が苦手の大工の松五郎は、齢30を超えても愛猫と暮らす独り身。親代わりの棟梁の命で嫁を迎えることに…。ホッコリするいいお話です。宇江佐さんの【浮かれ節】料理茶屋の娘が下級武士に一目惚れ。贅沢三昧に育てられた娘が意気軒高に、貧乏武家のもとに嫁ぎます。時は過ぎて、都々逸にハマり込む主人公(父親)を、理解支援する娘の心根のやさしさに胸打たれる粋な一品です。ほかの3作も心温まる、味わい深い佳作です。2020/09/28
アッシュ姉
61
がんこ~親不孝~世話焼き長屋と読んできた人情時代小説傑作選。すべて面白かったなか、マイベストはわれらが優さんの「小田原鰹」。『五年の梅』のなかでも印象的な作品で、豪華作家陣によるアンソロジーでも異彩を放っている。解説に「傑作中の傑作」とあって、嬉しくてニッコニコ。2020/09/08
ぶんこ
61
宇江佐真理さんだけの本だと思い込んで予約したら、5人の作家さんの短編集。しかも宇江佐さんは既読作品でした。初読み作家さんの村上元三さん、乙川優三郎さんの作品を知る事が出来て良かったです。お二人ともホノボノとしていて、これからも読んでみたいと思いました。和助の実直さが周囲の人々に伝わって、良い方へ良い方へと流れていくのが読んでいて気持ち良かった。乙川さんのおみち(おつね)も、あんな夫でも毎年初鰹を送るんだなぁと、実直な人はどこまでも実直と、我が身を省みてため息。2016/01/12
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