内容説明
南極へ日本初の観測隊を乗せた「宗谷」は、戦中には日本海軍の特務艦だった―。昭和13年、ソ連発注の耐氷型貨物船として建造されながら、曲折を経て海軍へ編入。戦後も引揚船、灯台補給船と姿を変えていき、時代の波に揉まれていた。そして、復興の証となる南極観測が計画されたとき、観測船に選ばれたのは…。激動の昭和に残したその航跡を追う。
目次
第1章 ボロチャエベツ号
第2章 軍艦「宗谷」誕生
第3章 大東亜戦争へ突入
第4章 特攻輸送艦、出撃
第5章 灯台補給船として
第6章 いざ、南極大陸へ
第7章 ありがとうオビ号
著者等紹介
大野芳[オオノカオル]
1941(昭和16)年、愛知県生れ。明治大学法学部を卒業後、雑誌記者を経てノンフィクション作家となる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ゐづる
23
強運の船として知られている帝国海軍唯一現存艦、宗谷。彼女の持つ幾多の伝説を詳しく知りたい人はウィキペディアを参照してほしいですが、その生涯を細かく描いた作品です。とにかく細かい!どっちかというと、記録文学でしょうか。細かすぎてそこまでいらんやろと思うところ多々あり、斜め読みで終わってしまいました。宗谷について、ドラマチックな作品があればいいのにと思った次第です。2015/11/22
ikedama99
6
南極観測船としての宗谷しか知らなかったので、その誕生から観測船そして巡視船と働く宗谷とそれに関わる人たちが丁寧に書かれていて、面白く読めた。南極観測の第一次隊から第二次隊の話は、いろいろな葛藤やら暗躍のようなものがあって、おどろおどろしいものを感じた。これも徹底した取材のなせる業だと思う。読み応えある本だった。2017/03/13
Mikarin
6
幸運艦というと雪風や瑞鶴が思い浮かぶが特務艦という脇役ながら本艦も様々な幸運で戦争を生き残り戦後は南極観測船として最も有名なフネになった。昭和史そのままだ。南極観測隊の人事をめぐる内紛は初めて知った。人間の業の深さや本性には後味が悪くなる。2016/10/07
どすきん
4
年代的に生まれていない筈だが、ソ連(当時)の船に助けられた映像を見た記憶が有る。はじめて買った大きなサイズのプラモデルが、オレンジ色も鮮やかな南極観測船「宗谷」だった。本屋で見つけた平積みの本書に記憶がよみがえる。船の科学館で近くに寄った事はあるがこんな経歴を持った船だとは思いもしなかった。本物を見に行こうと思う。2014/02/22
nobuoK
4
読み応えのある本でした。敗戦国である日本が南極観測船「宗谷」に向けた日本国中の想いが伝わってきます。船の科学館の「宗谷」が大日本帝国時代に製造され、本目的とは別に軍艦として戦闘に参加したり、輸送船として満州や樺太からの引揚船、燈台守船、そして南極観測船として活躍。これだけ聞いただけでも壮大なドラマがあり、作品を楽しませてくれます。2013/06/04