内容説明
禁教の嵐が日本を襲った。苛烈を極めた拷問、眼前で行われる磔刑。村々を束ねる大庄屋は懊悩する。棄教か殉教か。隠れることは正しいのか。「人間には命より大切なものがあるとです」一人の男が決断した殉教、あふれてやまぬ涙。信仰とは、救済とは…。江戸時代を通じて、ひっそりと潜教し続けた福岡県「今村信徒」の慟哭の歴史を、真率に描きぬいた感動の巨編。吉川英治文学賞他受賞作品。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yomineko@ヴィタリにゃん
70
上巻よりきつく辛い。遠藤周作先生の沈黙より酷い。拷問の中でも見せしめに先に子どもを斬首し親に見せるという余りにも非人道的行為に怒り震えた。そんな事をしたら余計棄教しないよ!子ども先に殺されたら親は後を必ず追う。一気に死なせてはと熱湯を徐々にかけて殺す等人間はこの世で一番残酷。大浦天主堂が建ってもまだ迫害されていた。酷い目に遭っても信仰を捨てない信徒達。嬉々として死んでゆく様に涙が溢れる。吉川英治文学賞受賞の巨編。2023/07/13
tomoko
42
宣教→禁教→殉教の前巻に続き、棄教→潜教→開教の下巻。キリシタン弾圧をくぐりぬけ、300年にわたり信仰を貫いた九州今村の農民たち、故郷を捨て渡来する宣教師たち、家族や村人のために自ら殉教の道を選んだ道蔵(『泣いた赤鬼』に出てくる青鬼を思い出した)の深い信仰心に胸が熱くなる。キリスト教、仏教など宗教の根本は同じような気がするが、人が人を裁く歴史は悲劇でしかない。明治になって建てられた「今村教会」も今は観光名所なのかな。機会があったら訪れてみたい。2020/09/02
えみ
25
信仰の灯を守り続けた人々の実直な姿に触れ、その揺るがぬイエズス教の教えの深さと聖職者達の強い覚悟を知った今、魂が震えてる。一人一人の結びつきが三百年の時を越えてきた奇跡。宗教から見た日本の歴史。始まりを知らない者達にも根付いている信仰の灯に感動しないわけがない。「人間には命より大切なものがあるとです」禁教令により粛清の嵐が吹き荒れる中で、村の信仰を守るため自ら人身御供を願いでた男がいた。命を懸け神に祈りを捧げる人々を後世まで守り抜こうとしたその想い、言葉では言い表せない凄みがある。激しく胸を揺さぶる物語。2020/04/17
ロマンチッカーnao
23
今僕は、54歳。子育てが終わった。しかし、長寿社会を実現した日本では、後30年も50年も生きる。その長い時間がいったい何のための時間なのか。生きるとは何か。そのことにずっと悩んでいるんだけど、しかし、そのこことは答えが無いわけれど、この本を読めば、なんとなく、それでもいいと思った。戦国時代から明治までの長い時間禁教であるキリスト教を守り続けた人たち。厳しい弾圧に耐えながら、なぜ信仰を守るのか。仏教に鞍替えすればいいではないか。でも、守り続ける。なぜ生きるのか、なぜ信仰を守るのか、答えではない何かを掴めた。2023/10/08
Midori Nozawa
18
すごい本でした。今の福岡のキリスト信徒たちが、江戸時代に禁教下、どのような日常であったかが、克明に描かれています。大庄屋、庄屋の立場から、自らの信仰を守ることと、農民を守り、家族を守る苦渋がひしひしと伝わります。中学の歴史で習った、天正遣欧使節の伊東マンショ、千々石ミゲル、中浦ジュリアン、原マルチノの中でも中浦ジュリアンが興味深かった。表紙絵は平田道蔵と思われ、公儀の目を欺くために「自らが村で唯一棄教せざる者」として、十字架刑を受けた人。その今村の地に数百年を経て教会が建つ場面は感涙を覚えた。2020/12/30
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