出版社内容情報
山本 周五郎[ヤマモト シュウゴロウ]
著・文・その他
1 ~ 2件/全2件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ehirano1
93
標題作について。なんとも残酷な話ではあるのですが、残酷さの裏には言語化し難い「美しさ」を感じます。「美しさ」にもいろいろあるとは思いますが、哀しい美しさを体感できた読書となりました。2024/06/03
タイ子
80
どれもじっくり読ませてくれる昭和15年から39年までに書かれた13篇の物語。タイトルの「松風の門」は山周さんらしい武士の始末の付け方を教えてくれる作品。神童と言われた武士の子が藩主の幼君の目を失明させてしまう。その後の武士の子の生き方と責任の取り方が見事と言っていいほどに胸に沁みる。そうかと思うと「ぼろとかんざし」は男と女の幼い頃の出会がこんな姿になっては辛すぎる話。「薊」が意外な方向に展開するのが面白い。武士の妻が夫と閨を共にしない理由は。この時代、性的マイノリティをサラリと描けるのはすごい。2025/02/11
じいじ
71
周五郎の〈武家モノ〉〈下町モノ〉〈現代モノ〉を詰め込んだ贅沢な短篇集。どれを紹介するか迷った末…2篇を紹介。家老が跡継ぎで悩んだすえ、ある男を婿に迎えます。1年経って「奴を見間違ったかな…」と後悔します。ひとり娘を持つ父親の気持は昔も今も変わりません【狐】。私のイチ押しは【釣忍】主人公は大店を勘当された次男坊23歳。今はしっかり者の嫁を見つけ、毎日天秤棒担いで魚を売りさばく働き者に。この若夫婦の直向きさに応援したくなります。そこへ実家の跡継ぎの義兄が「戻って一緒に店を」と…。13篇どれも読み応え充分です。2024/12/12
tengen
33
伊達宗利は十歳の時に近侍で神童と呼ばれた俊才池藤小次郎の才能に嫉妬し袋竹刀をけしかけ逆に事故で右目を失う。小太郎に世継ぎの片目を奪った負い目を持たせて留飲を下げる宗利。宗利はその後江戸詰めとなっていたのだが、二十七年振りに新領主として宇和島へ戻って来た。今や小次郎は世捨て人のようになっていると知る。そして着任早々新領主の政道に不満を持つ百姓から一揆が勃発した。(松風の門)など、十三の短編集。☆彡松風の門/鼓くらべ/狐/評釈堪忍記/湯治/ぼろと釵/砦山の十七日/夜の蝶/釣忍/月夜の眺め/薊/醜聞/失恋第五番2024/11/22
ももたろう
33
4年半ぶりの再読。この本は、私が人生で初めて本格的に読書に取り組もうと決意し、一番最初に手に取った思い出の作品。あの当時はこの短編の作品を一つ読むのに2時間以上かかったのをよく覚えている。今読んでみると、じっくり味わいながら読んでも30分ほどで読み通すようになっているから、多少は読解力がついたのかもしれないと思った。久しぶりに読んでみて改めて思ったけど、周五郎はやっぱり別格。本当に稀有な作家。心底から大好きだ。この作家をもっと多くの人に読んでもらいたい。できるだけレビューをたくさん書こう。2016/10/30