出版社内容情報
ヴェネツィアに移り住んだ著者が出会った、街の素顔と人々の喜怒哀楽。裕福なマダムに仕える元漁師の半生、古い教会でのコンサート体験、古文書の電子化に取り組む人々…。滋味あふれるエッセイ12章。
内容説明
幻都の永遠と日常を描く十二章。
目次
雨に降られて、美術館
所詮、ジュデッカ
コンサートに誘われて
セレニッシマ 穏やかな、そして穏やかな
陸に上がった船乗り
エデンの園
土の抱えるもの
紙の海
読むために生まれてきた
揺れる眼差し
女であるとうこと
ゴンドラ
著者等紹介
内田洋子[ウチダヨウコ]
1959年神戸市生まれ。東京外国語大学イタリア語学科卒業。通信社ウーノ・アソシエイツ代表。2011年『ジーノの家 イタリア10景』で講談社エッセイ賞、日本エッセイスト・クラブ賞を受賞。現在、イタリア在住(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
どんぐり
67
ミラノからヴェネツィアのジュデッカ島に引っ越しをした内田洋子さんのイタリア本。須賀敦子さんなきあとは、イタリア在住の内田さんだ。とはいえ、まだ3冊目。ヴェネツィアの対岸にある島から水上バスで行き来し、町を歩き、迷い、そこから始まる人との出会い。町を歩くと橋、橋を渡ると水溜まり、敷石の揺らぐ路地、迷路のような道、目の前に現れる教会、どちらを向いても一枚の絵画のようだ。このヴェネツィアの「沈殿した歴史とそれを覆う水に浮かぶ船」に乗って、内田さんのエッセイは続く。2018/07/17
翔(かける)
33
仮面職人のサンドロの章に、思わずグッときてしまった。仮面喜劇、好きなんだよなぁ…。イタリア旅行、ヴェネツィアが一番好きだった。もっといたかった街。なぜか懐かしい気持ちになる街。次はヴェネツィアだけで数日いたい。そんな街。 最終章、女性ゴンドリエの話しが出てくる。美しい『ARIA』の世界とはほど遠い、女性排除の世界で耐え抜く一人の女性ゴンドリエの姿が描かれていた。絶対に不合格にさせたい男性ゴンドリエたちに、試験は不利なコース設定。罵倒される。それでも乗る。この話を引き出した内田さんは、やはりすごい。2019/02/10
pohcho
33
友人からのメールでヴェネツィアに住んでみようと思い立ち、冬の雨の日、早速家探しを始めるもなかなかいい物件が見つからず。濡れぼそり、暖をとりに入った美術館での偶然の出会いから家が決まる。住むことになったのはヴェネツィアを対岸に望む離島ジュデッカ島。階上の隣人に挨拶に行けば、教会でのコンサートに誘われ・・・と、エッセイなのに、まるで物語のような始まり方に胸が躍った。「読むために生まれてきた」では図書館員と子供たちの交流にあたたかい気持ちになった。現地の人々の息遣いが聞こえてくるようなエッセイ。 2017/12/20
たまご
29
海が,水が,潮が,湿気が,そして人々の息遣いが1300年以上も積み上がって作られてきた古都.そんなヴェネチアのすぐそばの島に,見守るように,見守られるように,時にやるせなくなりながらも元気づけられながら暮らす. ますます憧れの都市になりました,ヴェネチア.その不便さ(ある意味ツンデレ?)が愛おしくなってくるんだろうなあ.そしてアーティチョークのお尻,リゾットで食べたいです.2021/09/13
yuko
26
ヴェネツィアを対岸にのぞむジュデッカ島に移り住んだ内田洋子さんのエッセイ。古都にひたひたと湿気が迫りくる様子が全編を通して語られる。観光で人気の美しい街とは異なった、住人ならではの描写。豊かな言葉は世界を広げるが、貧しい言葉は世界を閉ざすというのが、印象的。内田さんの豊かな言葉で、私は異国を漂った気分を味わいました。2018/01/08