内容説明
柱の陰に誰かいる―フォギーことジャズ・ピアニスト池永希梨子は演奏中奇妙な感覚に襲われる。愛弟子佐知子は、姿も見たという。オリジナル曲フォギーズ・ムードを弾くと、今度は希梨子の前にもはっきりと黒い服の女が現れた。あなた、オルフェウスの音階を知っているとは驚いたわ。謎の女は自分は霧子だと名乗り、そう告げた。混乱した希梨子は、音楽留学でヨーロッパに渡り、1944年にベルリンで行方不明となった祖母・曾根崎霧子ではないかと思い当たる。そしてフォギーは魂の旅へ―。光る猫パパゲーノ、土蔵で鳴り響くオルゴールに導かれて、ナチス支配真っ只中のドイツ神霊音楽協会へとワープする。
著者等紹介
奥泉光[オクイズミヒカル]
1956年2月6日山形県東田川郡に生まれる。国際基督教大学大学院比較文化研究科修了。1993年『ノヴァーリスの引用』(新潮社)で野間文芸新人賞、瞠目反文学賞受賞。1994年『石の来歴』(文芸春秋)で芥川賞受賞。他の著書に『葦と百合』『バーナルな現象』(集英社)、『「吾輩は猫である」殺人事件』(新潮社)、『グランド・ミステリー』(角川書店)などがある
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感想・レビュー
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榊原 香織
127
大変面白かったです。 SF? 作者の猫愛、ジャズ愛がビンビン響いてきました。 ジャズピアニストのヒロイン、第2次大戦末期のドイツにタイムスリップ? この人のジョークは私のツボにはまります。内容と全然関係ないタイトルが謎。2024/08/25
ゆぎ🖼️
24
鳥に関する話は無かったような。🤔ジャズの話やクラシックの世界を幻想的な物語にしていて世界観に引き込まれた。ドラッグ?より脳は音楽を求めるて話でマフィアや暴力団に呼ばれて演奏した生業から冒頭にあってヤバいのかな?と思ってたら後半はマイルス・デイビスとの話になったり楽しめた。2021/11/21
大奥のじぃ
19
奥泉さん初読みですが肌に合う文体です。こんな、ワンセンテンスの長いビバップJAZZを彷彿させる文章がたまんなくよく響き、ズンズン読ませていただきました。 山下洋輔サン作曲のフォギーズムードもなんとなくブルースで良い感じ。NYのセッション描写が最高でセロニアス・モンク、マックス・ローチ、カーリー・ラッセル、ファッツ・ナバロ、ソニー・ステット、マイルス・デイビスのセッション。脳内再生されるナンバーは「A Foggy Day」一択。心に灯がともる、そんな一冊。2023/09/25
サンノート
15
500pくらいある長編。もっと短くしてもプロット的には問題のない内容。ピアニストの36歳女性が時を遡る話。読みやすく書かれた一般小説がデジタル的だとすれば、この作品はアナログ的だ。普通の一般小説であるならば、容易に削ぎ落としてしまうであろう部分を、執拗に細かく書き込んでいる。もはや神経症の疑いすら持ってしまう。だが、この作品の魅力はおそらく、その膨大かつ緻密な描写によるものだ。 ここを楽しめるか、楽しめないかで、この作品の読後感はまったく違ったものになるだろう。2017/12/01
ハッピーハートの樹
10
分厚い本を読む前には尻込みしがちです。読み始めには終わりが見えなくて、でも終わりが近づいてくるとあっという間だった気がして。達成感もあるし、そもそも楽しいし。でももう一回はなかなかできなくて。分厚い本って、フォギーの言う“旅”に通じるものがありますね。ときどきフォギーが言ってるのか、筆者の心の声なのか分からなくなるところや、超へ理屈な感じなのは、奥泉さんの持ち味なのでしょうか。宇宙オルガンとかロンギヌス物質とか、結論は煙に巻かれた気がするのも持ち味か?なんだかんだあるけれど、楽しかったので、全て良しです。2017/03/14