内容説明
オカルト雑誌の新米編集者、恭子はホラー小説の大家、待田から「禍記」という謎の古史古伝の存在を聞かされる。そこには、歴史の闇に葬られた人類誕生以前の世界のことが書かれているという。恭子はその書物に魅かれていき…。赤ん坊をすりかえる取りかえ鬼、孤島で崇められるひゃくめさま、そして、子供にしか見えないモミとは?神話、古代史、民間伝承を題材に、恐怖の真髄を描破した伝奇ホラー傑作集。
著者等紹介
田中啓文[タナカヒロフミ]
1962年大阪府生まれ。2002年『銀河帝国の弘法も筆の誤り』で星雲賞日本短編部門を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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アメマ
31
田中啓文が描く伝記ホラーだから一筋縄ではないと勘繰る。タブーとされている『禍記』という謎の古書の存在を暴こうとするストーリーを軸に摩訶不思議な話の短編集で構成されている。神話や民間伝承を基に作られ、予想外にエログロ駄洒落が抑えられていたので身構えて読むが、よくよく考えればバカバカしい設定にやっぱり田中啓文だとほくそ笑む。読み易く、それなりに質の高いホラーで非常に楽しめた。あとがきの著者による伝記モノについての解説は田中色満載。ラスト1行で伝家の宝刀炸裂(笑)☆3.52016/06/08
おすし
21
これぞエンタメB級ホラー!深読みしないでさらさら楽しめて良い!内容はサラサラどころかヌルヌルジュルジュル😇 最後の叙述トリックぽいのは要るのかw うへェとはなったけどw 著者さんのサービス精神ですネ~2025/01/13
備忘録
19
伝奇ホラー 禍記と呼ばれる太古の書物の存在を知らされた編集者がそれを探し求めるというストーリーを根底に ホラー短編が進んでいく 作品はそれぞれ良くできていて普通に短編集として各作品を読ませるだけで良かったのでは という気もするが 全て併せてひとつの作品にしたいということなのだろう2025/04/08
Norico
18
それを探そう、解読しようとした者はいつのまにか消息不明になるという「禍記」。ふとしたことでそれを知った編集者の恭子。教えてくれた作家も失踪して、最後に明らかになる自分の姿に驚愕。出てくる話はどれも気持ち悪い。妖怪というより人の悪意のが怖い気も。「黄泉津鳥船」はちょっと救われる2019/03/31
J7(読メ低浮上中)
18
『禍記』とは有史以前に表から闇へと葬られ、妖怪に堕ちた神々を記す暗黒の古文書。盲目の人間だけが住む島で崇められる「ひゃくめさま」。とある寒村で幸いをもたらすとされ、巨大な蝶の羽を持つ「ミツカイさま」。収録されているどのエピソードも、封印された異形の彼らに迫る過程は、ひたひたと恐ろしいものが暗闇からやってくるような戦慄を感じます。やがて明らかになるその正体も「ぎょえーっ!」と思わず叫びたくなるほどグロテスクです。なのに読み進めてしまうという、謎の吸引力を持った怪作です。諸星大二郎さんなどが好きな人にぜひ。2015/04/18