ゼロ戦―沖縄・パリ・幻の愛

ゼロ戦―沖縄・パリ・幻の愛

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  • サイズ B6判/ページ数 165p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784087733037
  • NDC分類 953
  • Cコード C0097

内容説明

轟音がつきまとってはなれない。その攻撃は執拗だ―狙われた者が狂気に至るほどに。それはあのカミカゼ機の轟音である。1945年4月のある日、沖縄の洋上で、戦艦メリーランドの艦上に「死」の種子をまいていった轟音が、いま現在に響きわたる。ローラ・カールソンを苦しめてやまないその轟音は、彼女にとって、父を失った苦しみといかにしても分かつことができない。ゼロ戦の轟音は、昼も夜もパリの彼女を追跡する。数学でめざましい成績をあげようと、天才的作曲家の青年ブルーノに愛されようと、何ものも彼女の苦悩を癒すことはできない。ゼロ戦はいちど狙った獲物を決して放そうとしない…。父は米国軍人、母はフランス人。永遠に未知の存在でしかない異邦の男の戦争遺児である若きローラは、自分の人生を変えてしまった秘密を、その果てまで探索しつづけてやまない。限りなく透明にして、張りつめた文体で、パスカル・ローズはおのれの幻想の行きつく果てまで、読者を道連れにしてゆく…。紛れもないひとりの作家の誕生を告知する、比類なき処女小説である。ゴンクール賞受賞作。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ソングライン

14
父は沖縄戦でカミカゼ攻撃により亡くなったアメリカ軍人、夫を亡くした母と共にパリに戻ったローラ、父の死を知るため手にした神風特攻隊員ツルカワの手記。精神を病む母、年老いて行く祖父母、数学者になる夢、才能ある作曲家との愛と別れ、そして彼女の青春の時に寄り添うように現れるツルカワの幻影とゼロ戦のエンジン音。自分の存在意味に怯え、傷ついていく少女の青春が見事に描かれます。2023/10/15

rumi

5
フランス人の作者がゼロ戦カミカゼに衝撃を受け一編の小説を書くのに値するほどの奥深い何ものかに触れたのだという。小説自体は戦記物ではなく大戦で父を奪われた少女の父親探し自分探しの漂流記。全編に渡りゼロ戦の轟音が聴覚を刺激する。文体は短いながら力強くリズムがあり読むものを緊張させつつ押し流してゆく。プツっと途切れるように終わる幕切れも話自体も白昼夢のようだ。2013/02/11

中玉ケビン砂糖

2
「夜明け早々、まだ太陽も昇らぬうちから、戦闘機は発進の態勢に入る。黒ずくめの機体に、決死の任務を担って、戦闘機のエンジンが始動する。」1996年ゴンクール賞作品。ゼロ戦・オキナワとは言うが、それがデュラスにおける「ヒロシマ」のような特別な位置づけではなく、見ず知らずの特攻隊員が遺した手記によって、主人公が、肥大化したその亡霊に悩み苦しまされながらも、今にも転覆しそうな人生をどうにかやりすごそうとする話だ。処女長編小説がフランス文学賞の王堂に入るというのが、またなんとも類まれなる作家。2014/07/21

さぼさん

0
父親を死なせたゼロ戦のパイロットの妄想に取りつかれた女の半生.内面の描写は見事ですが...前の人のコメント同様.イカれてます.2010/02/04

ANT

0
作者の意図とは異なるだろうが、バラードのクラッシュを思い出したw 綺麗だけどイカれてる。2009/03/31

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