内容説明
樹齢1200年、幹周り11メートル余の薄墨の桜。無惨な老樹の蘇生に奔走し、見事な花を咲かせた着物デザイナー吉野一枝。この桜が縁で、高級料亭の女将高雄と関わりを持つようになる。波乱の人生を歩んだ高雄、美貌の養女への歪んだ拘束、さらにその恋人との主従関係が、複雑な人間模様となって、悲劇の結末へと…。格調高い文章で綴る著者会心の作「薄墨の桜」。他に名作「八重山の雪」収録。
著者等紹介
宇野千代[ウノチヨ]
1897年11月山口県生まれ。岩国高女卒。「おはん」により野間文芸賞、「幸福」その他により女流文学賞受賞。日本芸術院会員。愛欲の世界を描いて比類ない地位を確立。代表作「色ざんげ」ほか。96年6月、死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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さと
42
父はこの薄墨桜をこの上なく愛し、何度となく足を運んでいた。艶やかさ、華やかさとは一線を画すこの花の美しさが子供の頃の私にはわからなかった。散り際に墨の如き色となるなんて。花の時期を終える間際まで命懸けで物言おうとする姿は、儚さどころか恐ろしささえ感じる。人生(命)が人の手に握られ自分を亡き者として生きてきた芳乃の心に鬱積した思い、叶わぬ想いを声として聞くことは叶わなかったが、最期の納め方は桜に負けぬ強さと恐ろしさを感じた。2022/04/08
風眠
29
この本が刊行されたのは1979年、ものすごく古いというほどでもないけれど約30〜40年前の言葉遣いや書き言葉は、今とはこんなにも違うのかと感じた。読めない漢字もあり、文脈から推測しながら読み進めた。老婆が「語る」という形式で書かれている物語が二篇収められている。ですます調の語りには、音楽のような流れる美しさがある。その美しさは脚色=「騙り」とも取れる。樹齢1200年の桜、高級料亭の女将とその美貌の養女との主従関係。言葉遣いの丁寧なお婆さんの昔語りに「本当かなぁ」と思いながら耳を傾ける。そんな作品であった。2015/06/05
いちごん
4
淡墨の桜(愛蔵編)を読む。故郷の桜の話だけに情景が思い浮かび、あんな岐阜と福井の県境の辺鄙ともいえる場所に桜に情熱を傾けた人がいて、今はすっかり観光名所になっているが・・・。樹齢1200年、やはりあの桜には多くの魂が宿っているとしか思えない。2011/02/28
ファンキーかず
0
私はこの小説の舞台となった根尾から約1時間の、場所に住んでいますが淡墨桜はまだ一度も咲いた所を見たことはなく今年は是非見に行こうと思っています。この本を執筆した住吉屋さんや根尾はこの前行って来ました。文中に出てくる風景そのままで読んでいて感情移入ができました。ラストの展開も非常に面白いです。お薦めです。
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