内容説明
観光名所として訪れる人が絶えない日本最古の木造西洋風建築、長崎の旧グラバー住宅(グラバー邸)。かつてそこには、維新の重要人物トーマス・ブレーク・グラバーと、息子の倉場富三郎が住んでいた。武器商人として、維新の陰の立役者として、激動の時代を駆け抜けた父と、後世に残る魚譜(グラバー魚譜)を残しながら原爆投下からまもなく自殺した息子―。二人の生涯は、近代日本の成り立ちを象徴するかのようである。幕末・維新から第二次大戦終結まで、日本の栄枯盛衰と重なり合う父子二代の歴史ドラマを活写する。
目次
序章 アバディーンにて
第1章 冒険商人のバンガロー
第2章 「死の商人」と薩長同盟
第3章 隠れ部屋と密航留学生
第4章 蝶々夫人とピンカートン
第5章 父と子の日本
第6章 長崎を愛した男
著者等紹介
山口由美[ヤマグチユミ]
1962年神奈川県箱根町生まれ。ノンフィクション作家。慶應義塾大学法学部法律学科卒業。海外旅行とホテルの業界誌紙のフリーランス記者を経て作家に。ノンフィクション、小説、紀行、エッセイ、評論など幅広い分野で執筆している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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S.Mori
8
明治維新の立役者の一人グラバーと息子富三郎の生涯を、日本の歴史に絡めて書いた新書です。非常に読み応えのある内容でした。冒険心に富んだ若者として日本に来たグラバーが、日本社会に受け入れられる過程には興味深いです。武器商人から三菱の顧問への転身は激動の明治の歴史の動きと一致しています。父と異なり穏やかな性格の持ち主だった富三郎に光を当てるところに、作者の優しさを感じました。英国人の父を持つ彼が長崎で原爆投下の場に居合わせることは、辛いことだったに違いありません。歴史の流れは時に残酷になることがあります。2019/10/30
takao
4
ふむ2024/05/23
ゆずこまめ
3
この薄さなのがもったいないと思えるくらいよく調べてあると思います。グラバー邸にはこんな歴史があったのね。ただきれいなだけじゃなかった。長崎、行きたくなりました。2010/12/27
Yoshiyuki Nishikawa
2
長崎グラバー邸は、単なる観光地の名所にしかすぎず、幕末の世界との窓口として志士達が活躍した場所程度にしか認識していなかったが。実際、長崎に旅行しても、訪れる事すらなかったのだが。この本に出合、グラバー親子二代の功績と時代的潮流を改めて知る事ができ、勉強になったし、興味を強く持った。因みに、トーマス・ブレーク・グラバー(父)は、キリンビールの創業にも深く関わり、ラベルの麒麟の髭は、グラバーの髭を模したとか、日光鱒の外来種鱒を放流したのが、グラバーであったとか、自分的にはトリビア的発見!?もあった、良い本でし2012/05/21
サボテンA
1
朝ドラや大河ドラマで、立て続いた幕末、明治維新。グラバー邸もその時代だったのか、点と点が繋がって、興味深かった。登場人物が、思い描けていいタイミングですっと読みやすくはいりました。2019/01/14