内容説明
伝承は、如何にして、いま・ここに存在するのか。伝承は消滅しつつある―諦念を含みこんだこの語りを耳にすることは多い。そこには、伝承は旧来のあり方を保存したまま持続すべきであるという意識が横たわっている。しかし、伝承とは、そもそも不変で静態的な存在なのであろうか。伝えていく行為とその主体への視点から、伝承を変わりゆく動態的なものと捉え返し、人びとの生活世界における伝承の実態を子細に分析することにより、現代における伝承の力を問い直す視点を提供する意欲作。
目次
本書の問題意識と課題
第1部 伝承概念再考(伝承の研究史;伝承概念の脱/再構築のために;伝承研究の現代的課題―柳田国男による自治論の再検討)
第2部 伝承の仕組みと動態(役割交替と伝承の相関性―主婦権とトウヤのワタシ儀礼周辺から;伝承意識と伝承の変化―芸予諸島・鵜島の氏神祭祀を事例に;伝承の仕組みと動態をめぐる考察―鵜島における“歴史”の構成)
第3部 現代社会と伝承(伝承の変化に見る高度経済成長期―千葉県浦安市の事例から;システムと伝承―平成の市町村合併を事例に;伝承と自治の再生に向けて―震災被災地における中間集団と相互扶助)
本書のまとめと今後の課題
著者等紹介
加藤秀雄[カトウヒデオ]
滋賀県立琵琶湖博物館研究部学芸員。民俗学専攻。博士(文学)。1983年、大分県別府市生まれ。2012年、成城大学大学院文学研究科博士課程後期満期退学。国立歴史民束博物館機関研究員/成城大学民俗学研究所研究員を経て現職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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