出版社内容情報
語れないと思っていたこと。
言葉にできなかったこと。
東日本大震災が起きたとき、伊智花は盛岡の高校生だった。
それからの10年の時間をたどり、人びとの経験や思いを語る声を紡いでいく、著者初めての小説。
第165回芥川賞候補作。
内容説明
盛岡に暮らす美術部の高校二年生・伊智花は東日本大震災を経験し、被災県に住むものの被災者とは言えない自分の立場に葛藤する。依頼を受けて被災地を応援する「絆」の絵を描くが、取材する記者は絵よりも「高校生の描く希望」を見ているような気がして―。言えずにいた思いが会話の中で滴りはじめる初小説。
著者等紹介
くどうれいん[クドウレイン]
作家。1994年生まれ。著書に、『あんまりすてきだったから』(第72回小学館児童出版文化賞候補作、ほるぷ出版)などがある。「氷柱の声」(本作)で第165回芥川賞候補となる。現在、文芸誌「群像」(講談社)にてエッセイ「日日是目分量」ほか連載多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
はっせー
43
本書は東日本大震災後の日常をテーマに震災からの心の再生を描いた作品となる。タイトルの『氷柱の声』について考察したいと思う。氷柱は東日本大震災前後で経験した思いや記憶。色々と辛いこともあったので氷漬けにされている。だが時が経つにつれこの氷柱は少しずつ溶け出してくる。マイナスなことが出てくるかもしれませんが、その中にはプラスなことや自分のアイデンティティにまつわることも一緒に出てくる。氷柱の声とは、氷柱が溶けるときに鳴る音(中から出ようとする記憶や思い)や水滴(思い出した記憶や思い)なのかなって思った😄2025/08/31
Tαkαo Sαito
21
あとがき含め、素晴らしかった。同じ東北で震災経験した近しい年代の者として、単行本のときにはなかなか読もうと一歩踏み出せていなかったのが事実で心の中を読まれているようなあとがきに刺された。読み終わってから心から読んでよかった、良い文章を読ませてもらえたと思える作品。2025/07/06
泉
6
トーミのあっけらかんとした感じが、しばらく会っていない友人と重なって心臓がギュッとなる。 自分が申し訳ないくらいにあの日の部外者なので、迂闊に踏み込むことができない。こうしてそっと覗き見させてもらえることがとてもありがたい。繰り返し大事に読みたい。2025/09/30
あゆお
5
芥川賞候補作だったらしい。もしこの作品が、芥川賞を受賞していたら、くどうさんはどう受け止めたのだろうか。被災地の高校生が、絵画で大賞を取った時のように、なんとも言えない気持ちになってしまうのか。2025/08/05
Hanna
4
東日本大震災にあうところから物語は始まる。東北の方だからこそ書ける小説なのかもしれない。風化させちゃいけないんだろうけれど、心のどこかでそっとしまいこんでいた出来事。2025/10/15
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