内容説明
後漢末期以来の乱世は、二八〇年の晋の統一で治まったかに見えたが、匈奴・鮮卑・羯・〓(てい)・羌など異民族の侵攻により再び「五胡十六国」の大分裂時代に突入。五八九年の隋の統一まで混乱は続き、華北では龍門、雲岡など石窟寺院が造営され、江南では陶淵明、顧〓之らで名高い六朝文化が栄えるなか、蛮と漢が融合した新たな中華世界が形作られていく。
目次
第1章 魏晋南北朝時代の幕開け
第2章 胡漢の抗争
第3章 胡漢の壁を越えて
第4章 江南貴族制社会
第5章 南朝後期の政治と社会
第6章 江南の開発と民族間抗争
第7章 北魏孝文帝の改革
第8章 北朝後期の政治と社会
第9章 古代東アジアと日本の形成
第10章 中華世界の拡大と「新」世界秩序
著者等紹介
川本芳昭[カワモトヨシアキ]
1950年長崎県生まれ。九州大学文学部卒業。九州大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。佐賀大学教養部助教授、九州大学大学院人文科学研究院教授などを経て、九州大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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榊原 香織
56
シリーズ5 五胡十六国、国名多すぎて覚えられず。やたら、武帝が多いのも困りますw 均田制はこの時代、北魏にて。 王義之もこの時代、東晋の人なんですね2024/05/11
Tomoichi
27
先日読んだ中公新書の「南北朝時代」は、各王朝の流れを分かり易く説明していたが(それでも複雑)、こちらはより総合的なので合わせて読むのをお勧めします。支那文明は西晋による中華統一を持ってピークなのかな?それ以降は民族的にも混血による新漢族になっていく訳で。いや漢族ってナンジャラホイ?2022/01/29
chang_ume
13
魏晋南北朝を通観しながら、「漢民族」誕生前夜の社会動向を描く。画期として北魏・孝文帝の諸改革。積極的な漢化政策によって、後の隋唐帝国に至る北朝系譜の「中華帝国」への道筋が拓かれた。また大きな時代背景として、南北朝期における「天」概念の東アジア規模での伝播が挙げられて、そのなかで倭王権の「治天下」も検討される。改めて、この時代は非常にダイナミックな社会変動があったんだなと。一方で南朝による「蛮」掃討は、現代のウイグル問題に通ずるジェノサイドも想起させて、「中華」という文化多元的な概念の暴力性もうかがえた。2021/07/07
さとうしん
13
「民族の時代」としての魏晋南北朝史を描き出す。「漢」に反発していたかに見えた「胡」が「中華」であると自認しはじめ、たとえば五胡から出たはずの北魏が自らを五胡から弁別しようとするといった動きをおこしていく。そして「中華」としての意識は「中国」の外の朝鮮半島諸国や倭国も持つようになっていくということで、古代の日本史も「中華」の歴史の中にうまく取り込んでいる。2020/12/13
coolflat
12
340頁。夷狄であった五胡の中から出現した北魏が北朝として中国の士大夫からも認知され、北朝を受けた隋唐が中国の正統王朝となるという逆転現象、隋唐の文化、国制に見出される胡族文化の影響などに注目すると、秦漢から魏晋へと受け継がれてきた中国史の流れはここに至って一転し、従来非正統であったものが正統になるというきわめて興味深い展開をこの時代の中国史は示している。また古代日本における歴史展開をその中華意識の形成という観点から、その軌跡を五胡・北朝・隋唐に至る中国史の展開を比較するとき、2024/08/27