出版社内容情報
オペラの入門書はもうたくさん世の中にありますし、かくいう私も書いたことがあります。どんな本にしようかとずいぶん迷いました。「トラヴィアータ」や「蝶々夫人」がどれほどの名作か、今更繰り返すまでもないのではないか。作品の個々の情報は、インターネットで簡単に見つかるのではないか。そんな時代に本を出す意味とは何だろう。そんなことを考え、オペラの世界の広さを示す方向性で行こうと決めました。
ですので、一応は歴史の流れに沿って章立てをしましたけれど、いわゆる名作、人気作にこだわったわけではありません。そもそも、たとえある作品がどれほど名作と言われていようと、あなたの心を動かさなければ、価値はありません。音楽史の学者にでもなるのでなければ、好きなものを好きなように愛すればよいと思います。それこそが愛好家の特権なのです。
ですので、本書を読まれた方は、ぜひ本場でオペラをご覧ください。私が言いたいことはひたすらそれに尽きます。それをしないでオペラを語っても、生身の女性を知らないで女性論を語る未経験な青年のたわごとと変わるところがありません。ただちに、が一番いいことは間違いありませんが、そうでなくても、いつか行くつもりになってください。
劇場には発見があります。また、どんなに見慣れた作品にも何か発見があります。それは本当に思いがけなく起こります。この世に存在するたくさんの閉じられたドアがひとつ解きあけ放たれたような気分。そうした経験をするために劇場に出かけることは、人生の大きな楽しみのひとつです。まして、それが外国の劇場でしたら、どれほど嬉しいことでしょう。
(「おわりに」より)
目次
オペラはどこでどう生まれたのか
リュリとラモー―宮殿で栄えるオペラ
ヘンデル―歌はロンドンで花開く
モーツァルト―革命のオペラ
ベートーヴェン―天才にもできないことがある
ウェーバー―天性の劇場人
フランスのグランド・オペラ
ワーグナー―巨大な、あまりにも巨大な
オペレッタ―あえて軽薄に
ロッシーニ、ベッリーニ、ドニゼッティ―イタリアの声の愉しみ
ヴェルディ―歌劇の「王様」
「カルメン」奇跡の作品
「ペレアスとメリザンド」―フランスオペラの最高峰
チャイコフスキーとムソルグスキー―北国ロシアで夢見られたオペラ
東欧のオペラ―独特の味わい
プッチーニ―より繊細に、よりモダンに
リヒャルト・シュトラウス―巨大なワーグナーの後で
ベルク―悲惨の大家
ショスタコーヴィチ―20世紀ソ連のオペラ
ストラヴィンスキー―アメリカで、英語で
オペラでないから「三文オペラ」
ミュージカルとガーシュウィン
ブリテン―苦い味わい
グラス―ミニマル音楽としてのオペラ
アダムズ―核の時代にオペラは可能か
著者等紹介
許光俊[キョミツトシ]
1965年東京都生まれ。慶應義塾大学文学部美学美術史学科卒業。東京都立大学大学院人文科学研究科修士課程修了、同博士課程中退。現在、慶應義塾大学法学部教授。近代の、文芸を含む諸芸術と芸術批評を専門としている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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