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内容説明
後醍醐の切なるご催促に、楠木正成は重い腰をもち上げた。水分の館から一族5百人の運命を賭けて―。すでに主上は笠置落ちの御身であった。また正成も、2万の大軍が取り囲む赤坂城に孤立し、早くも前途は多難。一方、正成とはおよそ対照的なばさら大名・佐々木道誉は幽閉の後醍醐に近づき、美姫といばらの鞭で帝の御心を自由に操縦しようとする。かかる魔像こそ、本書の象徴といえよう。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
chantal(シャンタール)
92
第三巻は楠木正成や南北朝の争いの始まりに関する記述がほとんどで、尊氏は最後の方にやっとお出まし。六波羅を悩ませ続けた日野俊基がついに捕まり、鎌倉で処刑される。そこで9年ぶりに再会した尊氏、これまでのらりくらりと、お気楽御曹司然としていた彼の胸中に倒幕の志ありと、やっと読者にも知らされる。次巻が楽しみ!今回は「街道をゆく」の佐渡の道を読んだ直後だけに、佐渡に流された日野資朝の佐渡での最期などが語られ、佐渡での描写もあったので、更に楽しく読了できた。2019/03/02
Willie the Wildcat
73
笠置陥落、後醍醐天皇平等院幽閉、そして正成赤坂城も落城。逆境の中での正成孤軍奮闘も、宮方に反感を買う理不尽さ。一見、対照的な正成と道誉。渡辺橋の合戦の前者の行動と、後醍醐天皇護送中の大覚宮への後者の配慮に、両者の共通した心底の思いを垣間見る。但し、この場面以外の道誉が、相変わらず婆娑羅全開なのには苦笑。印象的なのが、その大覚宮の生立ち。両統迭立の背景は理解するが、妥協の産物の副作用は、流石に様々な面で影響したのだろうなと感じる。因みに、随所に存在感を示す兼好の生立ちも興味深い。2022/01/31
優希
69
多くの運命を賭けて楠木正成が動く前半。前途多難になっている反面、佐々木道誉は魔像のような存在感で帝の御心に近づいているようです。今後の歴史との絡みが気になります。2019/01/17
ケロリーヌ@ベルばら同盟
57
楠木正成起つ。徒に栄達を望まず、ただ領民と一族の安寧のみ希求することは、乱世にては果しえぬ夢であったのか。再三の勅に応じて参じた笠置の後醍醐帝の陣で待ち構えていた殿上人たちの期待外れを隠しもしない一眄に、正成のその後の悲劇が思いやられて胸が塞ぐ。三巻では婆娑羅大名佐々木道誉の『鵺』振りが際立つ。色好み、計算高いかと思えば、センチメンタリズムも持ち合わす多面的な性質は、高氏、正成にはないメリハリを物語に醸し出す。雀の赤子を懐に抱いて讃岐に遠流された宗良親王のお姿が涙を誘う。2019/05/06
金吾
39
○楠木正成の決死の旗揚げと天皇を取り巻く移り変わりが印象に残りました。この巻では佐々木道誉の鵺的存在感が溢れているように感じました。2021/01/18