戦友の恋

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  • サイズ B6判/ページ数 188p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784048739900
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0093

内容説明

佐紀もそろそろ禁煙したら、と玖美子にしては珍しい忠告をした。いつもなら、うるさいなあと思ったはずなのに、神妙に頷き、まあね、あたしもやめようかなあとは思ってんのよね、と殊勝に答えると、そうしな、と玖美子は短く言った。病院へ行った方がいいよ、と今度は私が忠告した。行くよ、と玖美子は答えた。でも、結局行かなかった。行かないで死んでしまった―残された者の悲しみは誰にも癒せない。喪失の痛みを抱えて、ただただ丁寧に毎日を送ることだけ―。注目の作家が描く、喪失と再生の最高傑作。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

なゆ

77
大島さんの描く〝女同士〟がなんだか好きでハマっている。一緒に仕事を切り開いてきた〝戦友〟のふたり、編集者の玖美子とマンガ原作者の佐紀。てっきり二人それぞれの恋のあれこれ話かと思ったら…そんな軽いもんではなかった。そう、これは戦友の死のその後の、佐紀の心にぽっかりとあいた穴のような日々の話。大切な人を喪うって、思ってた以上のダメージにふと気づいたり、ジタバタしてもどうにもならなかったり。それでも最後はなんだか明るいこれからが感じられて、ホッと読み終えた。各章の最後の文章が、キラキラッとしてるのもいい。2015/02/11

konoha

64
大人の友情がしみじみ良かった。仕事を通じて出会った漫画原作者の佐紀と編集者の玖美子。出会いと別れ、再会、スランプ‥ドラマチックではないけれど、淡々としすぎず佐紀の人生が描かれる。登場人物、場所の描写が上手い。一文が長く最初は慣れなかったが、流れるような柔らかい文章は魅力。いつの間にか佐紀が後輩を育てる立場になり、その勢いに引っ張られるように仕事しているのも自然でいい。佐紀自身はあまり動いていなくて周りが動いていく。そこにリアリティーを感じた。山本文緒さんにどこか似ているかな。また好きな作家が増えた。2022/02/10

ぶんこ

47
漫画原作者の佐紀さんと担当編集者の玖美子さん。一緒に戦ってきた戦友といえるのが羨ましいくらい素敵な事ですね。そんな大事な人が突然亡くなり、長いスランプとなった佐紀さんと周りの人々。次に担当となった編集者の君津さんが苦手なタイプだったので、読むのに時間がかかりましたが、小学校の同級生だった達貴さんの元に出かけた最後の場面が素晴らしかったので、読後感も良くなりました。戦友と呼べる相手と夢中になって仕事に励める、心をほぐしてくれる律子さんのお店がある。そんな人生が素晴らしいと思えた。2018/02/15

nyanco

41
ひよっこ編集者と未経験者のあかねがタッグを組んで、はや10年、ずっと共に戦ってきた。しかし編集者・玖美子が突然、帰らぬ人に…。「友達」なんてぬるい言葉じゃ表現できない、「戦友」としか呼べない…。彼女の死後、かつて彼女の愛した人の息子と玖美子について語り合う表題作「戦友の恋」がとても良かった。脇を固めるキャラも良い。ラスト若い二人の女性にかつての自分達の姿を見つけ、やっと再生を感じられる物語。強いインパクトはないのですが、ふんわりとした空気感のある作品でした。2009/12/27

おれんじぺこ♪(15年生)

35
知らずにスピンオフを最初に読んでしまい(笑)こちらを知りました。スピンオフの方と佐紀の印象が違うなぁ。こちらの佐紀の方が素敵な女性。友達ではなく「戦友」である玖美子の死が彼女を包み込んでしまう。忘れようと思ってもなにかにつけ思い出す、だから戦友なんだろうなぁ。起伏に富んだ内容ではないし、設定も日常的なんだけれど、大島作品はなぜか惹かれる。会える人がいるのならば、先送りにせず会うべきである。亡くなってしまったら会いたくても叶わないのだから。大切な人を亡くした人じゃないとこの気持ちはわからない…2014/02/26

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