出版社内容情報
ドストエフスキー[ドストエフスキー]
著・文・その他
米川 正夫[ヨネカワ マサオ]
翻訳
内容説明
19世紀、酷暑のペテルブルグ。戸棚のような小部屋で鬱々と暮らす貧乏学生ラスコーリニコフは、ある夕暮れ時、高利貸しの老婆を斧で叩き殺す。「非凡人は凡人の法律や道徳を踏み越えてもいい」という論理に基づく凶行だったが、犯行の後、激しい苦悶がのしかかる―。人間存在の意味を問う壮大な物語の幕開け。
著者等紹介
ドストエフスキー[ドストエフスキー][Досто´евский,Фёдор М.]
1821年、モスクワに生まれる。19世紀ロシア文学を代表する世界的巨匠。矛盾に引き裂かれる人間を描き世界の文学・思想に多大な影響をあたえる。『罪と罰』『カラマーゾフの兄弟』などの大作を残すいっぽうで、繊細で叙情的な作品も描いている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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吉田あや
84
19世紀ロシアを代表する巨匠の五大長編の一角にして不朽の名作、一体どんな難関が…と若干構えるも、そんな心配は杞憂だと早々に気付く。いとわしい憂鬱なペテルブルグの街。美しい黒目に栗色の毛をした美男子である主人公ラスコーリニコフが抱えているのは、最早計画とも云える程に考え慣れてしまった醜悪な空想。一見陰鬱な文学作品に思えるが、見る者の多くが酔っぱらいだと判じる程大きな声で独り言をつぶやきながら歩く残念かつ危険な香り漂うラスコに始まり、捲れども捲れどもほぼどうかしている人しか登場しないキャラ渋滞。(⇒)2021/05/02
Shinobi Nao
21
『罪と罰を読まない』を読んだら俄然やる気が出て再挑戦。何しろ憶えにくい、故に挫折につながる長い人物名を、ラスコ、マメ父、修造、と『罪と罰を~』のみなさんがつけたあだ名を採用し、時に数頁にわたる長台詞で「この人誰だっけ?何を長々と語っているんだったっけ?」と見失いそうになっても深刻にならずとにかく前進して何とか読了。一カ月くらいかかってしまったけど、しをんさんが主人公を「イケメンだけどしょうもない奴」扱いしていたことが頭から離れず、悲劇というより喜劇を読んでいるように楽しく読みました。この調子で下巻へ!2016/05/24
miho
20
【2022-041】【図】社会人になったばかりの頃、同僚に文学女子がいて、その子に勧められて読んだときは、登場人物の呼び名が複雑過ぎて挫折しました。あれからだいぶ月日が経ち、重い腰を上げて再挑戦!当時購入し、そして手放したものがどこの出版社のものだったかは失念しましたが、今回はびっくりするほど読みやすい!呼び名はやっぱりちょっと戸惑いますが、それよりも先が気になる!(大方のあらすじは知ってはいても)この勢いで下巻へ…!2022/04/20
東京湾
20
「たった一つの生命のために、数千の生命が堕落と腐敗から救われるんだぜ。一つの死が百の生に変わるんだ―」貧窮する青年ラスコーリニコフは、己の論理に則り高利貸しの老婆を殺害するが、彼の神経はやがて著しく摩耗していく。人間をただの素材に過ぎない『凡人』と才能を有しあらゆる権利を許される『非凡人』に二分する思想、これがラスコーリニコフを理解するにあたり核となる。殺人者の心理に恐ろしい程肉薄し、その錯綜が家族や友人を巻き込むことでより細密に描かれていた。意識の流れを巧みに抽出した文学であり、濃厚な心理小説でもある。2019/09/19
sashi_mono
20
わが読書歴史上、もっとも積読歴が長く、買い求めてからゆうに二十数年が経つ本書。ロシアW杯が終了するまでに、何とか完読することができた。上巻では、老婆を惨殺してからのラスコーリニコフの克明な心理経過にぐいぐいひきこまれた。なお、明日のフランスVSベルギー戦は、本書の舞台と同じく、ペテルブルクで行われる。2018/07/07