出版社内容情報
巨匠の代表作にして、芥川賞受賞作史実に残らない小倉在住時代の森鴎外の足跡を、歳月をかけひたむきに調査する田上とその母の苦難。芥川賞受賞の表題作の他、「父系の指」「菊枕」「笛壺」「石の骨」「断碑」の、代表作計6編を収録。
松本 清張[マツモト セイチョウ]
著・文・その他
内容説明
森鴎外の小倉在住時代の足跡を、十年の歳月をかけてひたすら調査する田上耕作とその母。はかばかしい成果は得られず、病、貧困に一層落ち込んでいく―「或る『小倉日記』伝」。自らの美貌と才気をもてあまし日々エキセントリックになる、ぬい。夫にも俳句にも見放され、死だけが彼女をむかえてくれた―「菊枕」。人間の孤独を主題にした、巨匠の代表作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
hit4papa
72
名を成さんと粉骨砕身する市井の人々の姿を描く短編集。有能でありなが学歴や実績がないばかりに、周囲から足を引っ張られ煩悶する様は、辛いものがあります。最も、登場人物たちのエゴは相当なものなの。タイトル作は、森鴎外の空白の日々を埋めようと研究を重ねる名もなき青年が主人公。身体にハンディキャップを持ちながらの地道な取材は、喜びと落胆の繰り返し。人生を賭けたものが崩れさる時の虚しさに心を抉られます。その他、俳人として世に出んと情熱を燃やす主婦「菊枕」等。それぞれの主人公は、嫉妬とプライドを燃料としているようです。2023/03/18
かみぶくろ
60
3.8/5.0 夢破れる人たちが描かれる短編6篇。とりわけ卑屈まじりの功名心が祟ってどれだけ努力しても無惨に終わる生きざまが、人間臭くて痺れた。全編通じてどこか反権威的•反社会的な雰囲気が漂う。文章も端的で美しい。2023/03/17
外枠発走
35
文学賞受賞。表題作を含む6編をおさめた短編集。著者らしいミステリーではなく、文学、芸術の分野で、才能があるにもかかわらず、不遇な運命を辿った人を描いている。どの作品も、主人公の妬みや嫉妬を原動力として生きざるを得ない悲哀が、見事に描かれていた。表題作、「菊枕」は、実在の人物がモデルとなっているだけに、凄く感情移入した。2024/06/22
aloha0307
30
40年ぶりに再読 昭和27年芥川賞受賞📕 清張氏初期の短編集。事件やトリックはでてこず、後のような推理小説的展開はないが、氏の骨格をなすものが確かに感じられる。5篇に共通するのは、意欲&才能ある者が貧困や学歴の不備ゆえに卑屈と焦燥にかられながら辛酸をなめるところにある。孤独との過酷なまでの戦いです。2021/11/06
しーふぉ
26
誰が殺されたとかいう話しではない。どちらかというと直木賞のイメージの松本清張ですが、芥川賞作家なんですよね。良質の短編集です。2023/05/27
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