出版社内容情報
作家は終生、私のことを妻と呼ばず「人生の同行者」と呼んだ──並はずれた行動力で世界中を旅し、半世紀を越す執筆活動を続けた小田実。トルコへの静かな旅を通して、等身大の作家の姿、思想のエッセンスを伝える。
内容説明
作家は終生、私のことを妻と呼ばず「人生の同行者」と呼んだ―並はずれた行動力で世界中を旅し、半世紀にわたり執筆活動を続けた小田実。アムステルダムからトルコの首都イスタンブールへ、チャナッカレを経てトロイ、アソス、そしてトラブゾンへ。やがて訪れる別れの前、「東のギリシャ」への旅を通して、作家の等身大の姿、思想の底流を伝える。
目次
永遠の旅路
イスタンブールの迷い猫
旅は道づれ人は情け
トロイと『イーリアス』と「三十センチの高さ」
昼下がりのエーゲ海
アルキビアデス猫の憂うつ
玉砕
アソスの神殿とイソップ猫
デモス・クラトスよ!
トラブゾンの猫
別れのレクイエム
至福と喪失
著者等紹介
玄順恵[ヒョンスンヒェ]
水墨画家。植民地時代に日本へ渡ってきた済州島出身の両親のもと、1953年、神戸市に生まれる。82年に作家小田実と結婚。水墨画の他に、装丁、装画、挿絵の仕事を手がける(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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あきこ
4
小田実との最後の旅行を題材に書かれた。トルコからギリシャへ、小田の一生を総括するような旅である。夫は妻を「人生の同行者」妻は夫を「作家」と呼ぶ。その関係性が本書を読んでいくと自然と心に入ってくる。愛情と尊敬を持ちあった二人の時間を感じられる。終始戦争反対のスタンスに立ち、民主主義を守ろうとした作家である。主権在民、「小さな人間」の力を信じていた。作者の玄順恵さんは限りない愛情を注いで本書を書いた。軽やかで優しい文章であるが、別れの悲しみも相当だろう。今、小田さんが生きていたら何と言うだろう。2019/05/16
hasegawa noboru
2
小田実は妻である著者のことを「人生の同行者」と呼んだ。著者はこの本の中で小田を終始「作家」と呼ぶ。晩年の小田最後の西欧(トルコの古代ギリシャ遺跡)旅行に同行した思い出をたどりながら、作家小田実の全生涯の思考のエッセンスを噛み砕くように自らのものしようとして、作家と一体となった美しい文章だ。〈計り知れないやさしさと強さをあわせもっ〉た、行動する作家だった小田実が逝って10年。彼なら、今の日本を歯ぎしりしてどう行動するだろう。〈民主主義とは〉権力私物化する安部一狂のような〈「大きな人間」の起こす過ちに対して、2018/11/19