出版社内容情報
東京裁判のさなか、国際検察局が陸軍機密費の実態解明に挑んだ。関係者への尋問を軸にした捜査は、権力中枢における錬金術の核心にどこまで迫れたのか。忘れられた尋問調書の解読を通じて、戦前戦後を貫く日本の闇に目を凝らす。
内容説明
東京裁判のさなか、国際検察局の一人の検察官が、陸軍の「シークレット・ファンド」=機密費をめぐる捜査に取り組んだ。政府や軍の元高官らを次々と召喚、尋問を重ねるうちに、日本の権力中枢における錬金術の核心に迫ったかに見えたが…。厚いベールに覆われた機密費の実態を、いかにして、どこまで明らかにできたのか?長年埋もれていた英文尋問調書を読み解き、特命捜査の顛末をたどりながら、戦前戦後を通じて息づく日本の“闇”の正体に目を凝らす歴史ノンフィクション。
目次
捜査の始動
連日の尋問
特命捜査の背景
見えてきた構図
直接対決
内閣の機密費調達法を追う
東条の秘密資金は上海から空輸されたか
捜査迷走の背景
田中義一の「陸軍機密費事件」
台湾総督府陸軍機密費〔ほか〕
著者等紹介
渡辺延志[ワタナベノブユキ]
ジャーナリスト。1955年、福島県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。朝日新聞社に勤めるかたわら、独自に歴史資料の発掘、解読に取り組み、著書に『虚妄の三国同盟―発掘・日米開戦前夜外交秘史』(岩波書店、2013年)がある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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onepei
2
機密とはいえ交際費に消えているらしいのは今もそうなのかなと思わせる2018/09/24
Moriya Mononobeno
1
戦前、機密費として軍人、官僚が思うように使っていたものが現在も報償費と名前を変えて残っていることを初めて知った。戦前の使途不明金なのに、そのまま戦後もちゃんと予算計上したとは。戦後70年にもなるのに戦時の金の使い道はよくわからない。もっともきちんと調べようとすると不都合な真実が出てくるので意図的に調査しないのだろう。作者は書く「日本の戦後社会は人的、組織的、そして精神的にも戦前からの強い連続性を大きな特徴としている。」確かにその通りでA級戦犯が国会議員になったりして、今ではその系譜が総理・財務大臣だ。2018/10/08
たつのすけ
0
◎2021/07/12
Ramgiga
0
昭和12年の日中戦争から敗戦までの陸軍の軍事機密費の総額は、7億円、今の金額に直すと、約5000億円。この機密費の使い道を追った労作。満州事変で機密費は飛躍的に増加し、それは国内に還流され、政治工作に使われた。親軍政治家を大量つくり、政治を軍の思いのままに動かした。国民に教育勅語を押し付け耐久生活を強いる一方、軍幹部は酒池肉林の放蕩三昧に明け暮れた。さらにその構図は戦後に引き継がれ、外務省機密費が還流されている。安部首相の花見の会など内閣機密費の乱用であろう。2019/04/18