内容説明
源博雅の枕元に夜な夜な現れる、異国の美しい女。何か言いたげな眼で博雅をみつめ、甘やかな匂いを残して消えてゆく…。安倍晴明は、博雅が帝から賜ったという摩訶不思議な琵琶に着目する。はたして琵琶と女の関係は?(「月琴姫」)真夜中の観音堂で、延々と経を唱える小僧の声。もののけか? いつまでも読み終わらないわけは…。(「魔鬼物小僧」)御歳71の名僧・浄蔵の淡い初恋が、40年の時を経て成就する!?(「浄蔵恋始末」)など全9篇収録のシリーズ第9弾!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
196
陰陽師シリーズ30周年記念完読プロジェクト https://bookmeter.com/users/512174/bookcases/11399200?sort=book_count&order=desc 今回は、第十二巻です。本巻で安倍晴明が初めて源博雅の自宅に行ったのではないでしょうか?オススメは、『月琴姫』&『浄蔵恋始末』です。続いて第十三巻、絵物語第三弾 「陰陽師 鉄輪」へ「ゆくか」「ゆこう」「ゆこう」 https://books.bunshun.jp/sp/onmyoji2019/05/21
KAZOO
126
長編「瀧夜叉姫」上下2巻を読んだあとなのでこの短篇9作はほっとした感じを受けました。自然や音曲あるいは人情の機微に触れたりするものが多かったように感じます。ほろりとした気持ちになるものが多いと思います。読み返す頻度も高くなるのでしょう。2017/09/26
眠る山猫屋
62
再読。とても良かった・・・。神仏に誘われるような物語から恋の昔語りまで。神宿るような月琴に愛される博雅。蝉や虹もまた、神々の一部、人間がそうであるように。ひとつところに心を据え置くならば、その本質は美しく(あるいは醜く)極められていくものなのかな。そして最後に語られる『浄蔵恋始末』がとても好きだ。数十年前の叶わなかった恋が静かに甦る、いや眠っていただけの忘れ難い想いが。浄蔵さまの大切な思い出は、変わらず生き続けていた。記憶じゃない、本人はそれと知らずとも。共に生きられなかった日々が、取り戻せますように。2019/07/22
るぴん
48
9作目。いかに博雅が優れた楽人かというのがわかるエピソードが2編。神々に笛の音を所望され、阮咸に宿る精霊には愛され、陰陽師でもないのに式神まで作ってしまうなんて。博雅も罪作りな男よ。『瀧夜叉姫』で活躍した浄蔵の若気の至りの話「浄蔵恋始末」もいい。浄蔵ですら煩悩は捨てられないもの。人は結局人なんだと思わされた。/「この世に、おまえがいてよかったと、おれはしみじみと今、そう思っているのだよ、晴明ー」「馬鹿…/そのようなことを、ふいに言うものではない、博雅ー」完全に愛の告白だよなぁ(*´艸`)♪2020/05/07
絳楸蘭
34
噎せるような濃密な自然の香りと見えないはずなのに綺羅綺羅輝く笛の音や月光、陽光などの色彩に溢れる清明の屋敷で酒をかたむける二人の姿が印象的な1冊。どんな時でも自然を思い心揺らす博雅どのとそんな博雅どのをそれでいいと受けとめる清明の関係が心地よい。誰もが清濁併せ持って生きている。それが自然な姿なのだと言われたような気がする。2014/07/13