内容説明
老境の弁護士、詩人、すれ違い始めた男女が、それでもなお「今ここに在ること」の素晴らしさを歌いあげる。光に満ちた八篇を著者への深い敬愛を込めて編者が選ぶ。生誕一〇〇年記念。
「人間の生きる姿」と「地上に存在するよろこび」を訴えていた辻邦生の仕事は、どこか孤立しているようにさえ感じられた。逆に言えば、彼の強さはまさにそのような孤立をものともせず、いついかなるときも、コリン・ウィルソンの言う「〈すべては素晴らしい〉という唐突な感情」のわきでる泉に向かって、探索者のように進んでいく膂力を有していたところにあるだろう。
堀江敏幸「噴水の水滴になること――『竪琴を忘れた場所』解説にかえて」より
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
tosca
34
辻邦生の生誕100年を記念して、堀江敏幸が選んだ8篇の短編集。堀江氏の解説から引用すると、「人はこの世に生まれ、やがて死を迎える。誰もがそのサイクルの中にいて、死んだ瞬間に自分と世界の関係は終わり、自分のない世界がこれまでと同じように存在し続ける。だとしたら人生に意味はあるのか」。丁寧で美しい文章は読んでいて気持ちが良いけれど、自分には難解な部分もあり、スラスラ読める短編集ではなかった。「今を本気で生きること」か…。自分の読解力がイマイチ伴ってはいないものの、今年を締めくくる作品としては申し分なかった2026/01/01
霧雨
2
堀江敏幸さんが選者となってまとめられた辻邦生短編集。久しぶりに辻さんの作品を読んで、むかし長編を読み漁っていた頃のことを思い出した。若かったな。。。繊細で精緻な文章に、作者の「生」をひたすらに見つめる姿が浮かび上がる。社会主義の研究者・宮辺音吉関連の作品は、私には理解が少々難しいところがあった。「バビロンの庭園」が寓話的で読みやすく、短編集をしっくり締めくくれた。2025/12/29




