内容説明
これは、中世の老修道士アドソが、見習修道士時代の体験を回顧して綴った手記である。そこに記されていたのは、彼が訪れた、北イタリアの修道院で起きた連続殺人事件の顛末だった。アドソが付き従っていたのは、理知的て論理的で誰もが驚嘆する推理力の持ち主であるイギリス人修道士、バスカヴィルのウィリアム。彼とともにアドソは、修道院の誇る、迷宮構造を持つ謎めいた文書館に足を踏み入れることになる。本書は、初版刊行以来、エーコ自身が加えてきた数々の訂正、削除等をすべて反映したものになっており、巻頭には、そうした修正について、2012年版に作者自身が寄せた付記も収めた。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
syota
43
14世紀北イタリアの修道院で、修道士が連続殺人事件に挑む推理小説。また、既得権益を擁護する教皇寄りのカトリック保守派と皇帝の支援を受け清貧を唱える修道会改革派の対立、それに伴う弾圧や異端審問など、当時の騒然とした世相を描いた歴史小説でもある。作者が中世の専門家だけに、その詳細さとリアルさは特筆もの。事件はまだ五里霧中だが、中世イタリアの生々しい歴史ドラマにどっぷり浸かり、濃密な時間を堪能することができた。教義上の対立点や異端と正統との線引の難しさなど、宗教的な内容も多いが、それも興味深かった。2026/05/27
とも
39
読書界のラスボスのひとつを読む。上巻。主人公?のウィリアムが訪れた修道院でずっとよくわからん論争をしてる。そのノイズ(失礼)は多いが起きてる事件は割とシンプル。そして上巻ラスト付近に訪れる情事、これまでの禁欲的な展開からの落差が凄い。 難解なことは織り込み済みだったので身構えてたよりは読みやすいかも。下巻へ。2026/02/25
鐵太郎
34
ほぼ30年前に旧訳で読んだのが最初。その後時間を経て数回読み返したのち、改訳いや「完全版」が出たということで読み直しました。この書は、西暦1327年に若い見習修道士アドソが体験した物語を、本人がその世紀末頃回想録として書き残し、それが1600年代にとある碩学によって発見され筆写され、1842年にある修道院長が発掘して記録したものを、1968年にそのフランス語版を入手した筆者が1980年にイタリア語で刊行した、という体裁の重厚な歴史ミステリです。お高いので図書館本なのが辛いな(笑)。いずれ買わないとね。2026/05/09
クラムボン
32
中世北イタリアの修道院が舞台。作者は中世文化や哲学が専門の学者なので、それらには縁遠い日本の読者にはハードルが高い。ただ修道院で起きた連続殺人事件の謎が、この難解な物語を読み進める原動力になる。アヴィニオン教皇庁とフランチェスコ会との論争の調停役として滞在した同会の修道士ウィリアムが、僧院長から事件解決の依頼を受ける。事件の鍵を握ると思われるのが謎の【文書館】。ここは館長以外絶対に入れないのだが、遂にその迷宮に踏み込むことに。下巻では異端審問官との神学論争が見せ場のようだが、果たして理解できるだろうか?2026/04/22
塩崎ツトム
28
前に読んだときと比べると、物語の合間に入る議論と、そこに挟まれる固有名詞についてだいぶなじみがあるもので、おかげで知らない単語にも大体時代背景や別の用語からそのニュアンスをなんとなく推測できた。物語の中に入るためにその時代背景や設定を知っている必要はないが、知っていたらなおのこと登場人物たちの置かれた立場や、思考の奥行きとその限界について思いを馳せることができる。2026/06/29
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