内容説明
【第174回直木賞受賞作】東京・上野の片隅にある、あまり流行っていない「カフェー西行」。食堂や喫茶も兼ねた近隣住民の憩いの場には、客をもてなす個性豊かな女給がいた。竹久夢二風の化粧で注目を集めるタイ子、小説修業が上手くいかず焦るセイ、嘘つきだが面倒見のいい美登里を、大胆な嘘で驚かせる年上の新米・園子。彼女たちは「西行」で朗らかに働き、それぞれの道を見つけて去って行ったが……。大正から昭和にかけ、女給として働いた“百年前のわたしたちの物語”。/【目次】稲子のカフェー/嘘つき美登里/出戻りセイ/タイ子の昔/幾子のお土産
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
546
第174回直木賞候補作、第五弾(5/5)、直木賞発表前にコンプリートしました。嶋津 輝、2作目です。本書は、「カフェー西行」を巡る連作短編集、良作ではありますが、直木賞を獲るほどのインパクトはありません。直木賞予想は、 ◎本命:葉真中 顕「家族」、〇対抗:住田 祐「白鷺立つ」、▲穴:大門 剛明「神都の証人」 で、最終確定といたします。 https://bookmeter.com/mutters/290082904 https://www.tsogen.co.jp/np/isbn/97844880293642026/01/12
imakiraku
467
本作は、大正から戦後にかけて、カフェー西行で女給として働く女性たちを描いた五つの連作短編集。 風俗営業に関する規制により、カフェー西行は喫茶西行、そして純喫茶西行へと名前を変えますが、マスターの菊田は変わらず、心優しく懐の深い人物として店を支え続けます。 印象に残ったのは「タイ子の昔」で、子を戦地へ送り出した親と子の手紙のやり取りには、親が子を想う気持ちが切実に描かれており、涙を誘われました。 登場人物は皆それぞれ魅力があり、苦しい時代を生きながらも懸命に前を向く姿が、余韻として残りました。2026/01/12
tamami
443
本年度直木賞受賞作。東京は上野にあったカフェ西行を舞台に展開する連作中編集。戦前から戦後にかけての時代を背景に、カフェで働く折々の女給さんに焦点を当て、彼女たちの周りで展開される、笑いあり涙ありの人生模様を淡々とした筆遣いで巧みに描く。作者の嶋津さんは初読みであったが、人物造形に巧みで話の運びも面白い。おそらく同様な光景は、多くの場所で繰り広げられたであろうけれども、一つの物語として示されることで、自分の過ぎし日の出来事と重なって思い起こされ、深い感慨を齎す。改めて小説の持つ真実性ということに思いを致す。2026/02/11
まちゃ
418
東京・上野の「カフェー西行」で女給として働いた女性たちの物語。大正から昭和を生きた彼女たちの喜怒哀楽がしっとりと力強く、そして温かく描かれていました。良かったです。2026/05/03
R
383
第二次世界大戦前後の日常が切り取られた物語。その時にあったカフェー、そこに勤めた女給さん、その周りの人々が断片的に繋がっていて、切り貼りのような物語だけど、かえってそれが、実際に触れた人たちもそうであったような追体験めいた読書になって興味深かった。当時の状況下での人生を見つめて、今でいうバイト仲間程度の認識の人たちと大きな干渉はないが、影響は些事積み重なって連なるという綾みたいなのが読めるのが面白かった。どうだったのかは示されないことが多いことが、人生そういうもんだが小説でそうなのがよかった。2026/03/22




