岩波新書 文化が違えば、心も違う？ - 文化心理学の冒険

著者名：北山忍【著】

岩波書店（2025/08発売）

• ISBN：9784004320784

内容説明

文化が違えば人の考え方も変わる．では，文化の違いはどこから生まれる？　文化はこころにどのような影響を与えている？　人類の歴史や地球の生態から，脳神経や遺伝情報まで，多様な知見を駆使して，人間のこころのメカニズムを解明する文化心理学．通俗的な偏見を退け，多様性の本質を捉える最先端の試みを紹介する．

目次

はじめに
第１章　サブサハラ・アフリカに，「文化の違い」を追い求めて
１　アフリカでの挑戦
２　競争が協調を生む？――自己促進的協調の文化
３　他の文化圏と比較してみると
４　親しみか，怒りか，誇りか――感情表出のパターン
５　なぜ文化圏によって違いが生まれるのか
６　文化心理学とはどういう学問か
第２章　日米の常識を疑う
１　文化発見の旅
２　カルチャーショック――日米の文化的差異
３　人間関係の能動性と受動性
４　人についての文化的常識を再考する
５　アメリカから日本へ
６　多様性から共創へ
第３章　文化と心のダイナミズム
１　新たな地平を目指して
２　独立・協調というモデル
３　個人主義と集団主義
４　規範の厳格さ
５　関係流動性
６　まとめ
第４章　人類史から見る文化の起源――生態条件と進化
１　文化はどこに？
２　生態・文化の複合体
３　遺伝子との共進化
４　進化が紡ぐ多様性と普遍性
第５章　多様性と普遍性を探る旅
１　ユーラシア大陸
２　中心傾向の意味すること・しないこと
３　心の世界地図
４　「近代西洋」はどこから来たのか
５　文化心理学が示す未来への道筋
終章　文化心理学という知の冒険
あとがき

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

[KAZOO]

このような心理学があるということは今までに知りませんでした。社会学のようなまた心理学のような感じです。アフリカでは仲間でも競争をするということでこれは個人事業主が殆どであるからのようです。このような研究自体があまりないということは日本での居場所がまだないのかもしれません。第3章の「文化と心のダイナミズム」という個所がわたしには面白く読めました。

2025/10/06

[たま]

図書館の新着棚で見つけた本。70年代に流行した『ユダヤ人と日本人』式の小ネタ本ではないかと警戒しつつ読み始めたが面白かった。著者はミシガン大学の教授で文化心理学なる新しい分野を開拓してきたとのこと。70年代に日本人が大挙して海外に行くようになり異文化に目覚め、その結果異文化理解の小ネタ本がたくさん出版されたと思うが、その一方、同じグローバル化を背景に欧米モデルの心理学に疑問を持ち、文化的な差異を科学的に研究する試みも始まっていたようだ。試みの一つ、認知のあり方の違いが興味深かった。

2025/12/03

[けんとまん１００７]

文化・環境・自然・歴史・・動植物の変遷など、時間が織りなすもの。そんなことを漠然と感じながら読んだ１冊。国民性とか民族性ということで括られることも少なくない。さらに、この国でいうと県民性・地域性にもなるのかなと思う。気質とでもいえばいいのだろうか。ふと思ったのは、いい悪いではなく、それをどう解釈して考えるか。人間というものの不可思議さの一端。

2025/10/18

[neimu]

実のところ、普段感じていることや昔かんがえたことなど、ああ、こういう風に解釈するのね、こんな風に文章化できるのねと思った部分が多かった。章立てや問題提起やエピソードはともかく、小さな納得や気づきがあるにはあったのだが、話の流れはさっと頭に入るものではなく、入試の評論・論説文のような雰囲気が強かった。（指示語が多い！）将来入試問題に採用されるかもね、みたいな。多様性が取り上げられることの多い現在、西洋だけではなく、その他の文化圏を比較対象に持ってくること自体、研究・著作としては必定十分条件なのかもね。

2025/10/14

[kan]

なかなか興味深い一冊で勉強になった。トロッコ問題と関係流動性の高低の関係など、へえ～と思う内容が多い。中でも、ある特定の遺伝情報が、文化の影響を受けやすい、文化の｢担い手｣へと導く役割を果たすという話は驚き。気になって最新研究を調べてみたら、日本のようなtightでrigidとされる文化規範において規範違反があった場合に、日本出身でかつこの遺伝情報のキャリアに、神経反応が大きいことが観察されたようで、興味深くもあり、一方で分断を招くような気もするし、でも納得いく面もあり、複雑な気持ちになった。

2025/10/19