内容説明
人間とはどのような存在なのか、人間がもつとされる「心」とはいかなるものか。もし、すべては環境によって規定されるというならば、人間らしさをめぐるあらゆる探究は無に帰するだろう。そうした人間性をめぐる不毛な対立を乗り越え、それぞれの人間が生まれながらにして兼ね備えた多様性や差異を認めていくこと、そこからしかよりよい世界は生まれないはずだ──。政治、暴力、不平等、ジェンダー、子育て、芸術など多様なトピックを取り上げつつ、本書でピンカーはこう訴えかける。人間本性という永遠の謎に真っ向勝負を挑んだ快著に、「2016年版へのあとがき」を新たに訳出した決定版。
目次
IV 汝自身を知れ──心の設計仕様書/第12章 人は世界とふれあう──相対主義の誤謬/第13章 直観とその限界/第14章 苦しみの根源はどこにあるのか/第15章 殊勝ぶった動物──道徳感覚の危うさについて/V 五つのホットな問題──人間の本性から見る/第16章 政治──イデオロギー的対立の背景/第17章 暴力の起源──「高貴な野蛮人」神話を超えて/第18章 ジェンダー──なぜ男はレイプをするのか/第19章 子育て──「生まれか育ちか」論争の終焉/第20章 芸術──再生への途をさぐる/VI 種の声──五つの文学作品から/二〇一六年版へのあとがき(松本剛史訳)/解説(佐倉統)/原注/参考文献/人名索引
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ふみあき
72
『21世紀の啓蒙』なんかと比べると難解だったが、個別の政治的争点について論じる第Ⅴ部から面白くなってくる。第19章「子育て」は小学生の子を持つ親としては、ある意味で感動的だ。行動遺伝学の知見によれば、子どもの人格形成に家庭環境の影響はほとんどない。「たいていの場合、親が子どもにした一番重要なことは、死なせなかった」ことだ、というのは皮肉ではない。親は子どもを作り上げようとするのではなく、ただ一緒にいることを楽しむべきなのだ。他にもイデオロギーやジェンダーや芸術について、進化心理学の視点から興味深い見解が。2025/06/18
Mits
1
印象は上巻から変わらない。人の人格には親よりも同年代の友達の影響の方が大きいのかもしれない。 あと、長い。頑固な一神教徒向けに書かれた本だからそうなんだろうけど、たぶん、日本人にはこの半分のページ数で伝わるハズ。2025/05/25
qls
1
5 13〜15章が特に面白かった。 高校や大学のカリキュラムにおいて経済学、進化生物学、確率論、統計学に高い優先順位を与える必要があるという主張には全面的に同意。 3/25〜3/302025/03/30
Go Extreme
1
心の設計仕様書:言語と思考 言語決定論 サピア=ウォーフ仮説 ニーチェ ウィトゲンシュタイン デリダ 相対主義 概念形成 ホットな問題:血縁と感情 社会的協力 ジェンダー差 生物学的違い 暴力の進化 攻撃性の起源 経済的不平等 知能と格差 知識と現実:知識の相対主義 錯覚の影響 インテリジェント・アイ 進化心理学 道徳的判断 価値観形成 倫理と社会:道徳的選択 中絶問題 生命倫理 遺伝子組み換え 食品安全性 科学と社会 社会的規範 競争と敵意 結論:認知の限界 知識の形成 社会変化 倫理的課題 科学と道徳2025/03/16