内容説明
国会前デモなど大論争を巻き起こした安保法制の成立から10年。
原告約7700人、約1700人の弁護団による安保法制違憲訴訟は、全国22の地裁や支部で25件起こされた。
結果は〝全敗?だが、唯一の憲法判断に踏み込んだ仙台高裁判決には重要な論理が隠されている。
それをどう組み立てれば、集団的自衛権の行使が実は不可能だと言えるのか。古来、用いられた「書く技法」によって記された、深層の論理は、いかに読まれるべきか。判決という「戦略的文書」を遺して急逝した仙台高裁裁判長の真意とは何か。
2023年、東京高裁と仙台高裁で二度証言した長谷部教授と、それらの尋問を担当した棚橋弁護士、そして司法分野・憲法問題の取材を重ねてきた朝日新聞の豊編集委員が読み解く。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ponnnakano
2
巻末に仙台高裁判決文があるので最初にこれを読んでみたが、法律の素人なのでゆっくり読んでも頭に入ってこない。その後、最初から読み始めると、かなりわかりやすく書かれていて、そう読むのかという学びがあった。この判決も知らなかったし、ニュースで見ても一瞬で忘れられてしまいそうな社会状況なので、専門家や報道が一般の人に伝える機会をもっと増やして、諦めず理解を広げていくことがとても大事だと思った。安保法制が国会で成立したときは絶望したが、この判決の読み方であればまだ少しは希望がある。本当は明白に違憲と言ってほしいが。2025/09/25
Ise Tsuyoshi
2
法廷に立った長谷部教授、棚橋弁護士と取材記者による解説。何が存立危機事態か、「条件を厳格に守れば、結局武力の行使は認められないはず」「実質的にはこの判決は、集団的自衛権の行使は認められないと言っている」(長谷部、p.46)。教授も認めるように、この考え方には「そういう解釈変更をしようとする人たちは、理詰めでものを考えられる人たちなのか」(p。48)という問題が残る。「判決は一つの解を示したが、これを足がかりに、この国の平和主義と立憲主義を、真っ当な国のかたちを取り戻さなければならない」(棚橋、p.198)2025/09/16




