内容説明
泉鏡花文学賞受賞作。年寄り海女と水産学校卒の孫との異色海洋冒険小説。天皇海山列、春の七草海山、海底につきささる戦時の潜水艦。円熟した作家がユーモアのある名うての文体で挑む傑作長編。解説・綿矢りさ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
りつこ
31
面白かった~。以前読んだ「飛族」と同じ系列になるのか? 85歳になった海女のミツルが語り手。この島では85歳になると倍暦といって年齢を倍に数える風習があり、それは大昔の天皇と同じらしい。 同じ海女仲間の婆たちと潜った海の海図を作ったり海関係の儀式に呼ばれたり地元の海に沈んだ潜水艦を探したり…。 婆たちは冒険心と好奇心とユーモアに満ちていてとても頼もしい。それは「飛族」と相通じる。彼女たちの目を通して見る戦争の生々しさは「国と国との尽きぬ喧嘩の途方もなさ」という言葉に集約されていると思った。読んで良かった。2025/08/26
練りようかん
15
主人公は170歳になった。倍暦という賜物が面白い、海女たちの生活と胸のうちに引き込まれた。海女になって日が浅い孫の妻が妊娠。悔しさを滲ませる物言いに主人公たち世代が“恐れ入った”場面があるけれど、後半貴方達も!と思う率直さがあって、多分な遣る瀬無さと喩えの上手さに独りごちた。戦争の記憶と戦地に向かおうとする幽霊たち、そして沈む戦艦が海深くでつながり泉鏡花文学賞作品らしく幻想のムードが程よく感じられたが、主人公と同世代なら体験実感の方が強いのだろうか。オーディブル向きだと思った語りの魅力が印象的だ。2026/01/02
feu
1
停年の85歳まで海女を続けた者だけに授けられる倍歴。ミツルと小夜子は同級生で二人揃って170歳となるが未だ現役。古代の天皇たちも倍歴だったのでは、と倍歴を迎えた四人の海女で考察する。この寄り合いでの会話がとても自由でほのぼのしている。四人で海底地図を作る。アワビが捕れる場所、船幽霊に出くわした場所、天皇海山列、海に沈んだ戦艦、なんでもあり。ミツルが戦艦の影を見たことでより戦艦に魅せられていくミツルと小夜子。ゆったりと深い海の中を漂っているような読後感。とても幻想的だった。孫の嫁の美歌との関係が素敵だった。2026/03/03
suicidal_genes
0
マジックリアリズムは老人や子どもと相性が良い。自他の境界が曖昧だから。更にマジックリアリズムは海中との相性も良い。人にとってそこは異界だから。この作品に出会えてよかった。戦争体験者がいなくなってしまったら惨劇を回避するための鍵は人間の想像力だけだから。と思った。2025/07/10
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