内容説明
六〇年代ロンドンで異端児と呼ばれた精神科医。彼の伝記を書く作家宛てに、ある女性の日記が届く。そこには、姉の自殺と精神科医の治療の関連を疑い、真相を明らかにすべく偽名で治療を受けた女が次第に我を失っていく様がつづられていた──。解説/大森時生
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ヘラジカ
43
物語自体はなんということがないのだが、語り口に魅了されて没頭してしまう。読書家なら誰しもが経験したことがあるはずだ。この作品はその最たる例と言って良いだろう。不確実なアイデンティティを巡る、不穏で不気味、そして茶目っ気のようなユーモアを備えたユニークな作品。淀んだ空気が満ち満ちていて、全体的に癖の強い小説ではあるが、最後まで読み通すと評価が一段階も二段階も上がる可能性がある。合わないと思った人でもある程度の忍耐は推奨したい。2025/05/30
練りようかん
17
面白かった。精神科医に姉を殺されたと確信する女性が偽名を使って受診。それらしく見せようと装うのだが本当にフリなのかが疑わしくなる展開。伝記執筆という構成で与えられる精神科医の事前情報が彼を曲者に見せ、正体に気づいているのか女性の精神疾患を見抜いてるのかドキドキした。彼女ならこうする、が彼女に怒られるになると机をバシッと叩きたくなりますます没入。興味深いのは“ペルソナに上下関係を与えるのは精神疾患の根源”という一文で、完全分離の瞬間が忘れられない。そして精神科医の生い立ちが付合の数々で巧かった。2025/06/29
くさてる
15
はっきりしない状況に、よく分からない構成で、いったいいつになったら面白くなるんだろうと思いながら読み進め、あまり好きでない流れに入ったあたりで、ぐるっと世界が変化して、ああ、なるほどと思いました。ここでそうなるのか、と。それでも、最終的に面白かったとはちょっと言えない読後感でした。R.D.レインなどの反精神医学の知識の有無でまた面白さが違うかも。2025/09/22
フランソワーズ
12
人が自らのうちに別人を作り出し、演じる。その快楽がやがては境界線を曖昧にしてゆく。〈私〉はレベッカという、自分とは全く異なる女性を生み出すことによって、到底出来なかったことを行う。もう一人の主人公といえるブライスウェイトはセラピストという職業から、人間のそのような一面を熟知しているだけでなく、患者たちを実験台にして楽しんでいる。いささか強烈すぎる自己肥大のために彼は常に渇望しているような人生であるが、その彼にしてもフランスで過ごした”別人”となったようなひとときには満足していた。→2025/10/04
TI
8
あらすじには 精神科医ブライスウェイトの伝記執筆のため、資料を集めていた著者の元に、ある若い女性のノートが届く—ブライスウェイトの元を訪れた〝患者〞が書いたものだ。彼女は身元を隠し、「レベッカ・スミス」という偽名で診察を受けはじめる。自分の姉の自殺には、通っていた精神科が関係しているのではと疑い、その真相に迫るためだ。 ノートの中で彼女が語るのは、家族の記憶、自分の欲望、そして姉の最期にまつわる物語。だが、読み進めるほどに、その語りには小さなズレが忍び込みはじめる。とかいてあるがズレは全くわからなかった!2025/06/22
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