内容説明
同棲中であるミワの家は、玄関のドアを開けると二つのドアが現れる。彼は帰宅すると、ミワのいるリビングに通じるドアではなく、先にもう一方のドアを開くという……(「どちらのドアが先?」)。三橋葉子は、母の死を機に、叔父が暮らしていた家に移り住んだ。葉子はその家に住むにあたり、窓がなくドアも見つけにくい小部屋をつくった……(「仕込み部屋」)。単行本時、話題沸騰した唯一無二の間取り小説、待望の文庫化。(解説・春日武彦)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
62
間取り図がある小説といえばミステリやホラー。よってこの手の本を目の前にするとどうしても思考がそちらに引き摺られがちだけど、本書は一風変わった家に住む普通の人達の物語であった。作中奇妙な出来事やショッキングな事が起きるわけではなく淡々としたペースで進んでいくが、読んでいるとそのリズムがなんとも心地よい事に気付かされる。三角形の家の先端、ガラス張りの部屋とか実際住むには不便だろうけど心惹かれるものがあるなあ。「浴室と柿の木」等は谷崎が上手い事小道具に使われていて膝を打ったし。一種独特な読み心地がする本でした。2025/10/31
cocomatsumoon
1
間取りとそれにまつわるお話。 こんな部屋に住む人ならこんな風に暮らしているかもな……とも思えたし、個人的に好きな部屋もあれば、怖い部屋もあった。 特にさわやかな感じもなく、妙にリアリティのある各間取りの主人公達。 間取りが載っていることで、想像しやすくて面白かった。2025/05/31
ひるお
0
間取り図から始まる13の短編小説集。どれも中編や長編に膨らみそうで、ここから盛り上がりそう、というところで終わってしまう。全体的に、前半収録の作品の方がより突飛で不穏、後半に行くほど穏やかになるような印象。いずれにせよ、あまり好みではなかった。2025/12/01
Xi
0
間取りと妄想。もうタイトルだけでぐっとくるじゃないか。ページをめくれば間取りからはじまる物語。ツーバイフォーのありきたりではない間取り。住みやすそうだったり、住みにくそうだったり、憧れだったり、気が狂いそうになったり。変わった家には変わった人が住むは言い過ぎだろうか。個性的な家には個性的な人が住むぐらいだったらゆるされるだろうか。とはいえ、一冊読み終えるとお腹いっぱいになってしまう。刺激は適量に。だ。2025/06/23
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- 和書
- 誰でもない 河出文庫




