内容説明
この希有な旅人のことをどうしても書きたい――。第二次世界大戦末期、敵国の中国大陸奥地まで密偵として潜入した若き日本人がいた。名は西川一三。未知なる世界への好奇心に突き動かされた男は、極寒の雪道、延々と続く砂漠、幾重もの峠、匪賊の襲撃や飢えを乗り越え、八年に亘り中国北部からインドまで果てしなく長い路を歩み続けた。二十五年の歳月を経て結実した超大型ノンフィクション。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ふう
66
沢木氏の「キャラバンは進む」でこの本について書かれていて、NHKのインタビュー番組でもなぜ終戦後8年も旅を続けたのか、旅人西川というのはどんな人間だったのか、その旅をたどりながら考えたかったと語っていました。内蒙古から内陸を経てチベットへの徒歩の旅。タイトルが示すように多分想像もできないほど遥かで壮大なものだったと思います。沢木氏の文章は飾りが少なく淡々としていますが、1行の文の向こうにどれだけの過酷さ、自然の厳しさと美しさがあったことか。西川の意志と身体の強さ、思慮深さに圧倒されながら読み進めました。2025/06/09
Shun
37
大戦末期に中国大陸の奥深く密偵として潜入した日本人を描くノンフィクション。この冒険家に沢木耕太郎氏が興味を持ち1冊の本に完成させるまで紆余曲折があり、そこにいくつかの偶然と運命が重なったかのような経緯も含め興味が惹かれます。戦争の最中に交戦相手国の奥地まで潜入するという危険と隣り合わせの任務に就きながら、男は幼い頃冒険小説を読み想像し夢見ていたチベットに到達してやるぞという情熱を胸に進んでいく。巡礼のラマ僧に扮し、遊牧民たちと寝食を共にしながらも旅の道程は過酷。自然の脅威と対比した雄大な美しさが映える。2025/05/02
Toshi
35
河口慧海を読んだら次は西川一三と思っていたところに、沢木耕太郎がその旅行記を再構築した本書が文庫化と言う僥倖。沢木は西川本人に2年に亘って取材をするが、作品化できないまま西川は亡くなる。そして25年の歳月を経て、西川の生原稿が見つかったことから沢木はついにその旅を辿り返す決意をする。こうして本書はスタートするのだが、やはり沢木は上手い。西川本人による旅行記はまだ読んでいないが、インタビュー等の情報を得て、その旅はより俯瞰的に描かれているようだ。上巻はチベットのラサに到着するまで。 あれ、河口慧海と同じ?2025/06/30
やな
29
最初なかなか入り込めなかったものの、国境を超えたあたりから、夢中になった。壮大な話、下巻へ進みます。2025/08/05
アオヤマ君
28
逸品。第二次大戦末期、敵国の中国大陸の奥深くまで「密偵」として潜入した若者・西川一三。その旅が沢木耕太郎によって紡がれた超ノンフィクションです。硬質な文体。聞き馴染みのない人名、地名。その旅をなぞるように1文章ずつ、1ページずつ読み進めました。(web上の地図でそのルートを辿りながら…)厳しくも淡々とした日常生活や旅の場面から、感傷的な場面や滑稽な場面、劇的な場面が急にきます。若き西川さんの人となり。気力、体力、そして胆力。上巻は出発、内蒙古からチベットまで。下巻へ。2025/09/08




