内容説明
元地図学者のネルは、ニューヨーク公共図書館の高名な地図学者である父の急死を知らされる。父はなぜか、平凡な一枚の道路地図を大切に隠していた。だが、価値がないはずのその地図の複製は、あらゆる所蔵機関から失われていた。父の死の翌日に図書館を襲い、煙のように消えた殺人犯の狙いもこの地図らしい。ネルは地図の秘密を探っていく。その地図は、隠された世界への招待状だった──新鋭が放つ傑作幻想小説。2023年ミソピーイク賞候補。/解説=渡邊利道
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ヘラジカ
47
本国ではボルヘスやピンチョンの名前が挙げられていたため身構えていたが、ミステリーと幻想文学が融合した物語は特に癖もなく、リーダビリティや娯楽性も遥かに高い。地図の神秘に着目したゾクゾクするような奇譚を、家族や友情を巡るサスペンスフルなドラマが肉付けした快作である。謂わば都市伝説(今風に言うならばSCP)が大好きな人なら本を置くことが出来ないだろう。かくいう自分もキングの『ランゴリアーズ』などを思い出してページを捲る手が止まらなかった。それだけに後半の展開は非常に惜しい。力業で雑な印象を受けてしまった。2025/04/16
小太郎
45
少々時間が掛かりましたが久しぶりの一気読み本でした。話は父との確執で地図学者の地位を追われたネルが主人公、彼女が父の死を知らされるところから始まります。登場人物がほとんど地図学者でメインのモチーフが地図上だけに存在する街アグロー。この設定(実話からだというのでビックリです)だけで引き込まれてしまいました。SFというよりはファンタジー寄りの作品で後半のどんでん返しなどミステリーの要素もあります。若干もたついた展開や最後はそうなの? と言うところも含めても力作で読まされてしまいました。★3.52025/07/17
あたびー
36
父の影響を受け地図製作者になったネルは、父と同じNYC公共図書館の職を目前に、父と大揉めし追放される。そんな時父の死亡が知らされ、ネルは父の遺品の中から謎の地図を発見する。父は殺されたのか?ミステリーでありながらファンタジー、そしてサスペンス。ありふれた古い地図に秘められた謎を追うちにさらに被害者が増えていく。何より驚くのは、この物語のベースになる非在の街の一件は実際にあったという事。ショッキングなエンディングからホンワカと希望を持たせてもらえるので、ちょいと安心した。2025/05/26
ぽてち
36
創元海外SF叢書の1冊で、原題は“THE CARTOGRAPHER”(地図製作者)。主人公のネルは7年前にニューヨーク公共図書館をクビになり、鬱屈した毎日を送っていた。そんなある日、元上司で地図学者である父の訃報が届く。現場に駆けつけたネルはそこで、父が隠し持っていた平凡な道路地図を入手するが……。ミステリータッチの導入部から描き出されるストーリーはSFというよりファンタジーに近い。肩透かしを食らった感もあるが、これはこれで楽しかった。2025/04/28
セロリ
35
ニューヨークの公立図書館で亡くなった父。その父の大切な書類ばさみに残っていた地図は、7年前、親子を引き裂いた地図だった。その謎を追う娘のネル。サスペンスで始まったこの作品は、徐々にファンタジーのような要素を追加していく。犯人探しのサスペンス、地図から生まれるファンタジー、そして7人の若い男女の青春の物語ともなっているこの作品は、地図にまつわる本当の話をヒントに作られたとのことだ。ネルが地図の謎を追う展開はスリリングで、ロミの意味ありげな言葉が効いていてドキドキした。『非在の街』というタイトルがおしゃれ。2025/07/18
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