内容説明
80年前の3月10日、東京にいったい何が起こっていたのか? 永井荷風ら作家が記録していた東京大空襲の壮絶な体験を紐解く。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kinkin
80
昭和20年の東京大空襲。作家や評論家他が体験したその様子が書かれた本の中から抜粋したもの。半藤一利さんの体験談は以前読んでいたが、相当ひどかったことがよくわかる。死者数で比較するのは失礼だが2011年の東北の地震の時は死者2万人、この空襲では10万人。落とされた爆弾も焼夷弾がほとんどと言われていたが普通の爆弾も多かったこと、熱というのはある温度になると白熱と言って自然発火すること。文人たちの多くの書物や資料も焼けてしまったという。実際にB29の残骸を見た人は、これでは負けると確信したという。図書館本2025/05/17
ちさと
24
昭和20年、10万人の犠牲者を出した東京大空襲の下、文士達が日記や随筆に書き残した戦争を届けたもの。内田百閒は番町に、山田風太郎は目黒に、堀田善衛は洗足、坂口安吾は蒲田、古川ロッパは下落合に、半藤さんは向島にいた。 3/18、被災地に巡幸した昭和天皇をばったり目撃した時の堀田善衛の苦悩にとても共感した。小説家の日記は嘘ではないけれど、いつか読者に読まれることを想定した、やはり小説に近いものになると思う。でも堀田のこの日の日記には「本心」が書かれている気がした。2025/06/16
hippos
18
広島・長崎への原爆投下はもちろん、日本の主要都市への空襲は(軍同士の)戦闘でもなけれな軍事施設への攻撃でもなく、市民を狙った「非人道的」な行為。「戦争を早期終結させるため」という米国の主張は強弁で実は米国自身もそのことを自覚しているのだと思っていた。しかし、本書のルメイ少将の章を読み、また先のトランプ大統領の発言を考えるともしかして本当にそう信じているのか?と思うに至った。まったく恐ろしいことだ。 母親を見捨て逃げるしかない状況、父親が目前で撃ち抜かれる、地獄である。2025/07/08
hitotak
11
作家、評論家、役者たちが、東京大空襲について回顧した文章や当時の日記等をまとめた一冊。炎と煙の中で逃げ惑い、沢山の死体を目撃し、家を焼かれ、身内を亡くすという痛切な記録である。構成した筆者は、かつて多くの人が亡くなった橋や寺、ある詩人が母親を見捨てて逃げ、次の日死体を見つけた路地を訪れて空襲の痕跡を探しているが、今はただ穏やかな風景である。空襲で自宅が全焼して疎開するが、行く先々で何度も空襲に遭遇する永井荷風、敵の本土上陸前に我が子を殺す決意をしたためた海野十三の日記などは特に当時の異常な状況が伝わった。2025/05/14
ビーグル犬大吉
6
東京大空襲前後の出来事を作家の視点で描いているのが斬新で貴重に感じた。特に印象に残ったのが堀田善衛の天皇の被災地巡幸だった。生き残った罹災者たちは己の不幸を差し置いてまで健気に、天皇に忠誠を誓おうとしていた。本来責任を取るべき側が取らず、戦争に負けたことさえも国民の努力不足に転嫁してしまう圧力が理解しがたかった。ただ、弱者や末端の者が責任を取らされる構図は現代社会にも通じる。戦争終結が「聖断」という形で決定されたのは興味深かったが結局、上層部は誰も責任を取りたくなかったから天皇に判断を委ねたのだろう。2025/04/29
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