内容説明
人として、男としての責任を果たした男
これが池波版「忠臣蔵」だ!
主人・浅野内匠頭が刃傷沙汰を起さなければ、
大石内蔵助は妻子と平凡な一生を送ったに違いない。
だが国家老として成すべきことがある。
それ以外に「おれの生くる道はない」。
吉良邸討入りの夜、積もった雪のなかを死に向かって
歩を進めた大石が、最後に脳裡に浮かべたものは?
池波正太郎の記念碑的作品。
文庫解説・里中哲彦
単行本 1971年9月 文藝春秋刊
文庫版 1977年12月 文春文庫刊
文庫新装版 2011年11月 文春文庫刊
文庫決定版 2024年12月 文春文庫刊
この電子書籍は文庫決定版を底本としています。
【※2011年リリースにされた電子書籍と、本文内容に変更はありません。】
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
佐藤(Sato19601027)
73
「物を美味しく食べ、良く眠り、女の肌を抱き、子を産み育て、家業を守る」という大石内蔵助の人生譚が感慨深い。元禄6年、35歳になった内蔵助は、江戸から赤穂へ帰国した浅野内匠頭長矩が生類あわれみの令を発布した将軍家をあからさまに批判することに対して、一抹の不安を抱くが、3人の子の父として、国家老として、忙しいながらも、遊蕩を繰り返していた。時は流れて、元禄14年浅野内匠頭による吉良上野介への刃傷事件で人生が一変する。御家再興の嘆願が叶わないと分かった時、遂に、討ち入りを決断。元禄15年12月14日を迎える。2024/12/13
まちゃ
53
主君・浅野内匠頭の刃傷沙汰による大石内蔵助の人生の変転。想定外の事件(状況変化)に内蔵助が、何を思い、どう対応したのか。淡々とした描写の積み重ねに、込み上げてくるものがありました。池波氏が愛してやまなかった男の生涯。面白かったです。2025/02/01
フミ
20
忠臣蔵で有名な、大石内蔵助の討ち入りまでの人生や想い、親しい人との友情などを描いた、人情寄りの小説です。女遊びが好きな人なので、性描写が苦手な人は注意(苦笑)上巻までは、悪法「生類憐みの令」で皆が憂鬱になる程度で、赤穂藩の家老としての「事なかれ」な日常が続きますが、下巻の途中から…。京都・山科での内蔵助の内面描写や、準主役格で登場する、赤穂藩士の次男坊「服部小平次(多分、架空)」が、上手い立ち回りをしていて、内蔵助はじめ、赤穂浪士たちを見つめていく話の作りに感心しました。人情に酔いたい男性におススメです。2025/12/27
majimakira
18
結び方に大変驚いた。赤穂浪士討ち入りの顛末を描き切るのではなく、「四十年の沈黙」たる平凡な人生を歩み、そして歩み切るはずだった大石内蔵助良雄の、決した運命に逆らわずに死に向かって歩むその「足音」を残し切ることを目的とした作品であることが改めて感じられるものだった。生まれ落ちた時から死に向かって一歩ずつ進んでいく人生。目の前のこと、そしてやがて死にゆくこと以外に確かなものは何もなく、だからこそ逆らえない数奇な運命も、一律にどの色とは決まらず移り変わるそれぞれの性質もある。池波文学にまたそう教えられた。2025/01/25
oanchan
3
池波正太郎が大石内蔵助を主人公にした小説。恐らく、刃傷が無かったら、仕事もそこそこにしかしないで、平凡な人生だったろう人。根っからの昼行燈だったなら、討ち入りは無かっただろうと思うし、浅野内匠頭もまあまあいい殿様だったから討ち入りがあったと思う。義理と人情、潔さ。時代劇に欠かせない三要素が詰まっていた。2025/07/29




