内容説明
シェトランド署の刑事サンディ・ウィルソンは、実家のあるウォルセイ島にいた。祖母のミマから電話で請われ、久しぶりに彼女の小農場を訪ねたサンディは、こともあろうにその祖母の死体の第一発見者となってしまう。ミマは一見、ウサギ狩りの銃弾に誤って撃たれたように見えた。親族間に潜む長年のわだかまりや、本土からきた調査班が小農場の敷地でおこなっている遺跡の発掘とは無関係の、単なる事故のはずだった。だが……。島に渡ったペレス警部がえぐり出す、事件の真相とは。現代英国ミステリの最高峰〈シェトランド四重奏〉、圧巻の第三章。/解説=三橋曉
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
W-G
312
先の二作品でメイン級だったキャラの登板を控えて、より事件当事者の露出比重を上げることで、今まで以上に小さな島での暮らしの閉塞感のが強く感じられたかわりに、前半の退屈さも今まで以上。少しずつ隠された事実が明らかにされるにつれ、楽しさは増してくるものの、今回は、事件に直接関係ない蛇足な究明シーンも多く感じた。犯人の設定が私の嫌いなパターンだったこともあり、これまでの中では一番点数が低いけれども、サンディの親類縁者たちそれぞれの抱える闇や複雑な感情の入り乱れは上手い。依然、平均点は高水準。2022/12/28
ケイ
115
シェトランド諸島シリーズ3作目。2作目を読んだ時に合わないと思ったのはなぜだろう。狭い島の人間関係やそこで起こる犯罪は、日本のミステリで言えば横溝正史作品のようでもある。しかし、シェトランドの地理的位置からはナチスや北欧との関係も絡み、その複雑さが想像力を掻き立てる。サンディの抱える落ち着きのなさや能力の問題の描かれ方が警察官にしては独特でそこがいい。彼に対する上司の適当に放任した教育の仕方も、味があってまたいい。2023/03/28
藤月はな(灯れ松明の火)
86
シェトランド四重奏シリーズ、第二作目。スキャンダラス好きで作り話の天才だったが、親の息苦しくなるような愛情などに押し潰されそうな子供達には人気があったサンディの祖母、ミマが撃ち殺されて亡くなった。ハティの情緒不安定な描写はこちらも胸が詰まる程、生々しい。そしてミマが抱えていた哀しい過去やサンディ君の母イブリンの過ちをサンディ君が受け入れた場面は、子が親のことを絶対性のある存在ではなく、一人の人間だと初めて理解した時の困惑や侮蔑などの様々な感情を踏まえて、初めて親のことを認められる優しさに満ちていると思う。2015/10/29
星落秋風五丈原
64
一見穏やかに見える村で実はドロドロしたものがありました…というのは『フラテイの暗号』と似ている。あぶなっかしいサンディが事件に巻き込まれる。2014/05/11
ナミのママ
63
〈シェトランド四重奏〉第3作。今回は夜間に野兎を狩猟して人を誤射、という日本では考えられない事件。1作目から登場しているペレス警部の部下の1人サンディ刑事。彼はシェトランド本島からフェリーで数十分のウォルセイ島に帰省して祖母の死体を発見してしまう。それだけで終わらず、さらなる死体、自殺か事件か?少ない人口、密な人間関係、戦争中から伝わる噂。インターネットもない時代ののんびりした捜査はゆるゆると進む。犯人は最後までわからなかった。解決しても小さな島の事件は重苦しい爪痕を残しそう。2022/12/06