創元推理文庫<br> 大鴉の啼く冬

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創元推理文庫
大鴉の啼く冬

  • ISBN:9784488245054

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内容説明

新年を迎えた凍てつく夜、孤独な老人マグナスを訪れたのは、ふたりの女子高校生だった。ひとりは金髪、もうひとりは黒髪――そう、まるで彼が助けた、傷ついた大鴉の羽根のようにつややかな。だが、四日後の朝、黒髪のキャサリンは死んでいた。大鴉の群れ飛ぶ雪原で、赤いマフラーを喉に食い込ませて……。地元のペレスと本土のテイラー、二人の警部が見いだしたのは、八年前の少女失踪事件との奇妙な相似。誰もが顔見知りの小さな町で、誰が、なぜ、彼女を殺したのか? 試行錯誤の末にペレスが掴んだ悲しき真実とは? 英国本格派の新旗手が、冬のシェトランド島の事件を細密な筆致で描き出す、CWA最優秀長篇賞受賞作。/解説=川出正樹

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

367
殺人事件の真犯人と、その動機とを解明してゆくという、いわば本格派ミステリー。ミステリー初心者たる私は、当然ながら作家によって誘導された人物を犯人だと思っていてハズレ。小説の成功の最大の要因は、絶海の孤島シェトランドを舞台に選んだことにあるだろう。しかも、その地が最も厳しい気候条件に晒される冬が選ばれている。第2の要因もまた、閉ざされた島の濃密な人間関係にあり、これを解きほぐしてゆくのがマグナスである。彼はまさしく、トリックスターの役割を担っていたのである。なお最後の数行はまことに心憎いばかりの演出だ。2017/03/24

W-G

321
とても硬派な警察小説。玄人好みとも地味ともいえる落ち着いた文体は、退屈スレスレなので読者を選ぶかもしれない。解説にもあるように、シェトランド島という非常に小さなコミュニティ内での、近しい人間関係の中で事件が完結する点が魅力となっており、真相にたどり着くまでの手順は、実は後半のある人物の証言だけに頼りきっていて捻りが足りないのだが、犯人の意外性や島の雰囲気がとても良い。シリーズ物としても、作品を跨いで興味を引っ張れそうな人物間の関係がたくさん仕込まれており、続編でも楽しませてもらえそう。2022/12/14

🐾Yoko Omoto🐾

148
季節は冬、雪雲に覆われたように重たい空気感が全編に漂う。イギリスの最北端に位置するシェトランド島。島の住人は皆が既知の仲であり、行動の全てが筒抜けとなる距離感にある。そんな島で起こる殺人事件と8年前の少女失踪事件。人々の噂や思い込みや嘘の中に真実が埋もれていく様が4人の多視点にて描かれてゆく。人の親である者と人の子である者たちが織り成す様々な家族関係、その奥にある確執や秘密、ありふれた日常の中に抱え持つ閉塞感や孤独感。それらが重なり膨らみ形を変え非日常へと動く展開が、実に丁寧に描かれた上質のミステリ。2016/03/19

ケイ

129
「シェトランドシリーズ第一作」 イギリスの北の海、ほとんど ノルウェーの方にある島。そこはイギリス本土とは違う小さな島。余所者がはっきりしているところ。若い女の持つ毒や残忍さをはっきりと見せつける。2018/07/15

ちょろこ

128
静に包まれる、一冊。舞台は新年を迎えたシェトランド島。雪原で見つかった少女の遺体。誰が、なぜ…?過去に起きた少女失踪事件が関係しているのか…。読み応えのある作品だった。やっぱりこういう閉塞感漂う町、限られた人間関係でのミステリが好き。雪原にすっぽり包まれたかのような謎。静かに捜査の歩をすすめるペレス警部。静寂と漂う哀しさがじっくりと文字を追う時間を包む。ずっと籠に閉じ込められていた大鴉が解き放たれたかのような瞬間。この瞬間へ辿り着くまでの緻密な過程、人々の絡み合う心情を読ませてくれる静かな冬の物語。2020/01/14

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