内容説明
比類なき圧巻の物語、いよいよ完結!!
「飢えの雲、天を覆い、地は枯れ果て、人の口に入るものなし」
恐れていた災いが凄まじい速さで広がる中、アイシャたちは必死に事態の収束を図るが、巨大な国家は、容易に方向転換が出来ない。民に危機が迫る中、孤独を抱えながら生きて来た<香君>が選んだ道とは。比類なき圧巻の物語が、いよいよ完結。
解説・長田育恵
※この電子書籍は2022年3月に文藝春秋より単行本上下巻で刊行された作品の、文庫版を底本としています。文庫版は4巻構成となります。
単行本『香君 上 西から来た少女』 → 文庫版『香君1 西から来た少女』/『香君2 西から来た少女(ともに2024年9月発売)
単行本『香君 下 遙かな道』 → 文庫版『香君3 遙かな道』(2024年11月発売)/『香君4 遙かな道』(2024年12月発売)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ふう
70
作者が意図したことではないのでしょうが、物語としての壮大さと美しさのところどころに、現実の社会にも通じる問題や考え方が重なり、共感する部分がたくさんありました。植物や土の力、虫の特性について農民に教える訳についてアイシャが語ったこと。「みんなが自分で判断できるように。自分の行動が何に繋がり、どんな結果をもたらすのか、想像できるように。」とても大切なことです。参考文献に『樹木たちの知られざる生活』があげられていて、あゝやっぱりと納得。地上に現れた物語の下には、たくさんの学びと思いがかくされています。2025/01/09
あきぽん
54
剣や弓矢や槍は登場しない、魔法は嗅覚のみ…という異色のファンタジーですが、ちゃんとクライマックスと大円団を迎えました。古代では農業を制するものが制したのは真実でしたよね。また文章から香りが立ち上ってきた…これからの香君の幸福を祈るばかりです。2025/01/03
なつくさ
42
終幕。あっという間に読み終わってしまいました。植物と虫、そして、香りの関係。目には見えないけど、そこにあるもの。普段は意識していないが、全て繋がっていること。当たり前に享受しているあれやこれやは、今日の自分に、誰かの明日に繋がっていることが、その意味が胸に迫りました。ぼくらは万象を知ることはできない。でも、想像の翼はどこまででも羽ばたかせることができる。目に見えないものを想像し、支えあうことができる。それを忘れないでいたい。これからも物語の種が蒔かれ、成長するのを楽しみに待っています。とても良かったです。2025/01/03
みやび
38
あとがきを読んで「植物同士も互いに人間には分からない形で活発にコミュニケーションを取り合っている」という話が以前テレビでやっていたのを思い出した。オアレ稲や救いの稲に感じていた不穏な不気味さがそれによって払拭され、害虫に分類される虫も含めて、ある種の哀れみというか切なさみたいなものに変わった。結末としては、かなり端折られていて強引に纏めた感があり、思ったよりあっさりと終わったけれど、それでも青香草の香りのような清々しい気持ちになれたのは良かった。皆が幸せに暮らせる未来であって欲しい。2024/12/25
毎日が日曜日
29
★★★★★ 完結。2025/01/01